今回は、大河ドラマ『光る君へ』で、三浦翔平が演じる藤原伊周(これちか)をご紹介したい。

文=鷹橋 忍

京都御所御内庭 写真=GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

『枕草子』にも登場

 藤原伊周は、天延2年(974)に生まれた。紫式部の生年には諸説あるが、仮に天延元年(973)説で計算すると、伊周は紫式部より一つ年下となる。

 父は、井浦新が演じる藤原道隆。母は、板谷由夏が演じる高階貴子だ。道隆が、数えで22歳のときの子である。

 藤原道長は叔父にあたり、伊周より8歳年上だ。

 すでに道隆には、天禄2年(971)に藤原守仁の娘との間に生まれた藤原道頼という男子あったが、嫡男は伊周であった。

 道隆と貴子の間には、伊周をはじめ、高畑充希が演じる定子、竜星涼が演じる藤原隆家など、7人の子が誕生した。

 貴子は高名な学者でもある高階成忠の娘で、貴子自身も漢詩文に造詣が深い才媛であった。貴子の教育により、伊周も漢学・和歌に長じていたという。

 妹の定子に仕えたファーストサマーウイカが演じる清少納言(ドラマでは「ききょう」)の随筆とされる『枕草子』の「大納言殿参り給ひて」には、定子が中宮となった一条天皇(父は坂東巳之助が演じる円融天皇、母は吉田羊が演じる藤原詮子)のもとに伊周が参内して漢文の話をし、それが例によって深夜に及んだという記述がある。

 

中関白家の栄華の始まり

 ドラマでも描かれたように、寛和2年(986)6月、本郷奏多が演じる花山天皇が出家を遂げ、退位すると、伊周の従兄弟にあたる一条天皇が、7歳で即位。一条天皇の外祖父(母方の祖父)・段田安則が演じる藤原兼家が摂政となった。

 権力を掌中にした兼家は、道隆をはじめ息子たちを次々と昇進させていき、伊周も出世していった。

 伊周は同年7月に昇殿を許され、8月に侍従、10月に左兵衛佐に任ぜられた。

 翌永延元年(987)には、14歳で蔵人となっている。

 正暦元年(990)正月には、伊周の妹の定子が15歳(14歳とも)、11歳の一条天皇の後宮に入内し、寵愛された。

 同年5月、伊周の祖父・兼家は関白となったが、病のため5月8日に落飾入道し、関白を内大臣であった道隆に譲ると、同年7月2日に、62歳で死去している。

 政権の座に就いた道隆は、その基盤を固めるため、同年10月に、娘の定子を中宮に立てた。そして、兼家と同様に、伊周や伊周の同母弟・隆家など自分の子を昇進させていく。

 後世に「中関白家」と称される、道隆の一族の栄華が始まった。