独創的なアートが次々に現れる

 KAWSとバンクシー以外の8名も、アーバン・アートやストリート・アート好きにはたまらないアーティストたち。記者が気に入った作品をいくつか。

「MUCA展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜」展示風景

 シェパード・フェアリーはバラク・オバマ大統領の選挙キャンペーンポスターにより一躍“時の人”になった。オバマの顔とHOPEの文字が大胆にあしらわれたポスター。元々シェパードが個人的にオバマ候補を応援するために制作したものだが、その出来の良さから公式ポスターに採用されたとの逸話が残る。

 音楽を愛するシェパードはミュージシャンを題材にすることも多く、本展では《ジミ・ヘンドリックス》や《ボブ・マーリー》をモチーフにした作品を展示。LPジャケットの裏面にスプレーペイントとステンシルでミュージシャンの肖像が表されており、色遣いとグラフィックセンスが何ともおしゃれ。欲しくなる作品。

インベーダー《ルービック・アレステッド・シド・ヴィシャス(ルービックに捕まったシド・ヴィシャス)》2007年

 フランス出身のインベーダーは、世界中の都市の壁にピクセルアートを展開するストリート・アーティスト。代表作《ルービック・アレステッド・シド・ヴィシャス(ルービックに捕まったシド・ヴィシャス)》は、玩具のルービック・キューブを並べて、セックス・ピストルズのメンバー、シド・ヴィシャスの肖像を描き上げたもの。作品の側面を見れば、素材がルービック・キューブであることが分かる。マテリアルからアイデアが浮かぶことがあれば、逆にアイデアからマテリアルが決まることもある。その自由な行き来がストリート・アートの魅力だ。

JR《28ミリメートル、ある世代の肖像、強盗、JRから見たラジ・リ、レボスケ モンフェルメイユ 2004》2011年

 インベーダーと同じくフランス生まれのJRは写真家として活動するアーティスト。フランスのスラム地区で撮影された代表作《28ミリメートル、ある世代の肖像、強盗、JRから見たラジ・リ、レボスケ モンフェルメイユ 2004》には、思いっきり騙されてしまった。眼光鋭い男性がこちらに銃を向けている場面と思いつつ、よくよく見ると男性が持っているのは銃ではなくカメラ。偏見や思い込みは危険なこと。同時に「時にカメラは武器と同じぐらいの力を持つ」ことを表した作品だという。

 アーバン・アートは自由な世界。「なんかこれ、いいよね」くらいの気軽さで見てもいいし、「作品に潜む政治的、社会的なメッセージを読み取ろう」と頑張ってみるのも悪くない。本展では会場の様子も、展示されている作品もすべて撮影OK。アーバン・アートは、そうでなくっちゃ。