國學院大は主将の〝気持ち〟がチームに火をつけた
全日本3位の國學院大も体調不良者が続出した。12月10日にインフルエンザに集団感染。さらに1区を予定していた山本歩夢(3年)が12月中旬に故障を再発し、起用が難しくなったのだ。前田康弘監督は「シード落ちを覚悟した」というが、伊地知賢造(4年)と平林清澄(3年)がチームを盛り立ててきた。
前田監督は悩んだ末に4区を予定していた主将・伊地知を1区に起用する「鼓舞作戦」を敢行した。
万全ではなかった伊地知は「気持ちだけは絶対に負けたくなかった」とトップ集団に食らいつく。17位での中継になったが、「伊地知さんの勇気ある飛び出しに元気をもらいました」という2区平林が快走。インフル明けながら8人抜きを演じて、9位に急上昇した。3区青木瑠郁(2年)と4区辻原輝(1年)もともに区間4位と好走。しかし、沖縄出身の5区上原琉翔(2年)は冷雨になったこともあり、能力を発揮できず、往路を6位で折り返した。
復路は1年生3人(6区後村光星、7区田中愛睦、9区吉田蔵之介)を含む下級生5人が出走。順位を1つあげて、総合5位でフィニッシュした。危機的な状況のなかでもチームは意地を見せた。
「伊地知はいける状況じゃないのに、迷わずいきました。想定より遅れましたが、チームに漂っていた閉塞感を切り裂いてくれたんです。その気持ちは後輩たちにつながったと思いますよ」と前田監督は伊地知の〝攻めの走り〟を評価した。
主将・伊地知はタスキをつなげると、その場に倒れ込んだ。苦しいながらも〝完全燃焼〟の走りだった。
「正直、ラスト3㎞ぐらいは覚えていないんです。意識がちょっと飛びかけていたのかもしれません。自分の走りはめちゃくちゃ悔しいです。粘り切れると思って、突っ込んだ部分もあったので、自分の力不足を感じましたね。ただ、気持ちを前面に出すことができたのは良かったと思います。『てっぺん』を目指していた以上、優勝したかったという気持ちがありました。届かなかった夢を後輩たちに託したいなと思います」
伊地知は卒業するが、今回のメンバー9人が残り、ハーフマラソンで日本人学生歴代4位の記録を持つ山本歩夢もいる。國學院大は主将の意思を受け継ぎ、来季は本気で「てっぺん」を目指していく。