警告表示とともに過ごす2カ月

 パッド交換もディスク交換もパーツ確保の必要性もあり、また、12月に1年点検が迫っていることから、出直してその時に一緒に作業してはどうかという方針に落ち着きました。11月に海外出張が予定されていたので、12月には少し早いけれども、ちょうどその期間に点検を依頼するつもりだということを伝え、Sさんにも了承されました。それまで2か月弱あるけれども、そのくらいだったら、急にパッドの減りが早まるわけでもないから乗り続けていても問題ないそうです。

 しかし、わずらわしいのはマルチファンクションディスプレイに現れ続ける警告画面です。ステアリングポスト右下側に生えているレバーを手前に引けば、警告文は画面から消え、画面下に小さなアイコンが残るだけにすることもできるのですが、次にエンジンを始動すると再び現れるのです。

 警告は、パッドに埋め込まれたセンサーが残りの厚みを検知して発せられるものだそうです。

 厳密に言ってしまえば、この警告は“ブレーキパッドが危険なほどに摩耗しているからすぐに交換せよ”というものなのではないようです。実際、僕の年間1万kmという走行ペースならば2か月間は乗り続けても大丈夫と太鼓判を押してもらったわけですから、ある程度の余裕も設定されているのでしょう。

 そこが25年近く前のプジョーとは考え方も技術レベルも違うところです。現代のポルシェには、設計段階でトラブルを未然に防ぐことが組み込まれているのです。ユーザーも、トラブルに見舞われて個々人で解決の手がかりを見付けることをとにかく忌み嫌うようになりました。それに連動して、ディーラーも嫌がります。そういう時代なのです。

ポルシェ 718ボクスター ディーラー1年点検のお値段

 点検された項目と費用は、以下の通りです。カッコ内が費用で、単位は円です。

・1年基本点検 車両リフトアップ・システムテスター診断(39,754)
・エンジンオイル交換工賃(10,780)
・エンジンオイル MOBIL1 SN OW-40 4L(13,750)
・同 1Lx2(6,820)
・フロントブレーキディスクおよびパッド交換工賃(23,100)
・ブレーキディスク 左(48,290)
・同 右(48,290)
・ブレーキパッド1セット(36,300)
・スモールパーツセットx2(23,320)
・ケーブルルーム、ウェアインジケーターx2(19,690)
・パンヘッドスクリュウx4(3,828)
・エアコンプレフィルター交換工賃(3,080)
・エアフィルター(3,960)
・フロントワイパーブレード1セット(15,730)
・ポルシェアシスタンス更新(8,500)

 合計すると、30万5,192円(消費税込み)。内訳は、工賃が76,714円、部品が21万9978円、ポルシェアシスタンス8,500円。

 これとは別に、車載のSIMカード年間使用料を3万900円(消費税込み)支払いました。車内でWiFiを使用するためのものです。僕は、Apple CarPlayソフトを重宝して頻用しているので、車内WiFiはどうしても必要なのです。

 とは言っても718ボクスターには毎日乗らないので、コスパは良くない。代わりに格安SIMを差し込めば、だいぶ節約できるのではないか?

 ということを、3年間の無料期間が終了する時にSさんに訊ねてみましたが、“ロックが掛かっているので、このSIMカードでないと反応しません”との当然の答えでした。Apple Car Playと車内WiFiについては、いずれ稿を改めて報告します。

 ブレーキディスクとパッドを交換したので、30万円を超える出費となりました。それ以外は消耗品の交換だけで済んでいます。ワイパーブレードが高価なようにも感じますが、最近の他のクルマの場合を知らないので、なんとも言えません。

 何かが壊れていたのを知らなかったり、不具合を抱えたまま運転していたようなこともありませんでした。昨年の車検ではウォーターポンプからの冷却水漏れが見つかり、交換しています。それ以前の点検と車検では、特に故障や不具合はありませんでした。

 毎回、入庫のスケジュールが決まった時に、見積もりだけ先に送ってきます。バッテリーなど金額の張る消耗品を交換するか否かがオプションとして別記してあるくらいです。つまり、工場側でもクルマをリフトに上げてみて判明するような予期せぬトラブルや不具合は段々と減ってきていることを把握しているのです。それによって消耗パーツの交換時期は時間や走行距離によって予め定められ、事前に回避できるトラブルはなるべく回避されようとしています。

 入庫する直前に、エンジンオイルに関する通知もマルチファンクションディスプレイに何回か現れて消えていきました。たまたま自宅ガレージから出発しようとした時に撮った画像では、次のように写っています。

オイルサービス
 8900km
 30日

 前回の交換から8900km走行していて、あと30日で丸一年が経過するという意味です。こうした整備の履歴に関する情報伝達も僕がプジョー505GTiに乗っていた時代には存在していませんでした。紙の整備記録には記されていましたが、ユーザーへの注意喚起を効果的に行えるようになったのです。

 そうした、点検整備の明朗化が進んでいるのはユーザーにとってもディーラーにとってもメリットとなるので、おそらくポルシェだけのことではないのでしょう。これもクルマ好きの常套句ですが、「最近の輸入車は昔のように壊れなくなった」と言われているのも、製造工程の進化と併せて点検整備も改められてきたことが大きいのだと思います。