色褪せないキース・ヘリングの世界

「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」展示風景

「サブウェイ・ドローイング」により、一躍世界的な人気アーティストになったキース・ヘリング。その後もへリングは魅力的な作品を世に送り続けた。肩車をしてタワーを作る人たちを描いた《スリー・リトグラフス》。「人の梯子」と呼ばれる人気シリーズで、ゆらゆらとふらつく人物の姿がコミカルだ。

「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」展示風景

《アンディ・マウス》はキース・へリングが幼少の頃から大好きだったミッキーマウスと、敬愛するアンディ・ウォーホルを融合させたキャラクターが登場する版画作品。へリングとウォーホルは大の仲良しで、一時期へリングはウォーホルの工房に入り浸っていたという。

「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」展示風景

 さらに子供たちに向けて制作された《赤と青の物語》シリーズや、キース・ヘリングの代表的モチーフといえる光り輝く赤ん坊、通称“ラディアント・ベイビー”が登場する《イコンズ》シリーズなど、展覧会ではへリングの代表作を網羅。その総数は約150点に及ぶ。

「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」展示風景

 刺激的な作品を発表し続けるヘリングだったが、1988年にエイズと診断。死への恐怖を背負いながらも、彼は残された時間に自らのエネルギーを注ぎ込んでいく。1989年には恵まれない子供たちへの基金やHIV・エイズ予防啓発運動を継承していくための財団を設立。1990年にエイズによる合併症により31歳で亡くなるまで、へリングは社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズへの偏見や支援不足などに対して最後まで闘い続けた。

 キース・ヘリングは言った。「芸術はみんなのためのもの。みんなの隅々にまで届かないなら、芸術は無だ」。その言葉は現代社会に生きる人々の心にも強く響く。

All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation