スーパールーキーが牽引した東農大が10年ぶりの突破

 6月の選考会で14年ぶりの全日本大学駅伝の出場を決めた東農大も10㎞が13位通過と苦戦した。しかし、15㎞からスーパールーキーが躍動する。先輩・並木寧音(4年)とともに日本人集団のなかでレースを進めた前田和摩(1年)が自らペースを上げていったのだ。

「ずっと後ろにつかせてもらっていたので余裕はありました。チーム順位も通過ギリギリくらいだったので、少しでも稼ぎたいと思っていたんです。残り5㎞くらいなら持つかなと思い切って前に出ました」

 18㎞付近でリチャード・エティーリ(東京国際大1)を抜き去ると、20㎞手前で日本人トップの吉田礼志(中央学大3)を逆転。ハーフマラソンのU20日本記録に1秒と迫る1時間1分42秒で日本人トップの9位でゴールに飛び込んだ。

 並木が個人30位(1時間02分35秒)、原田洋輔(2年)が同61位(1時間03分32秒)、高槻芳照(4年)が同67位(1時間03分36秒)でフィニッシュ。残りの6人はほぼ想定通りのタイムでまとめて、10年ぶりの本戦出場を決めた。

「高槻と並木が4年生になったときに箱根駅伝の予選会を突破しようという考えでやってきました。この場所で学生たちの泣く姿をずいぶん見てきましたが、目標が現実になって良かったと思います。特に前田の走りが大きかったですね」(小指徹監督)

 前回までの予選会は高槻と並木が3年連続で学内ワン・ツーを飾るなど、チームを引っ張ってきた。そこに前田というスーパールーキーが加入。予選会は狙い通りのレースを展開したが、チームは夏に〝危機感〟があったという。主将・高槻が左足底を痛めたため、夏合宿の途中で離脱した。

「キャプテン不在の合宿で不安だったと思いますし、自分もちょっと無理かなと思ったんです。でも全員がよく頑張ってくました」と高槻。痛みを押しての激走が実り、涙を流しながら通過を喜んだ。

 高槻とともにチームを引っ張ってきた並木も、「やっと報われた気がします」と笑顔を見せると、「実家が権太坂の近くなので、箱根はもう一度2区(関東学生連合で出場)を走りたいんですけど、彼に勝たないといけないんで(笑)」と前田の存在を気にしていた。

 

3秒差で泣いた東京国際大

予選会5km地点、力走する京産大、立命大の選手たち 写真=スポニチ/アフロ

 通過ラインは13位までで、11位(東農大)から14位は45秒差。4校のなかで涙を飲んだのが東京国際大だった。通過が有力視されていたが、8.4㎞でエティーリが転倒。5000m&10000mの日本学生記録保持者が失速して、駿河台大と10秒差、山梨学大とはわずか3秒差で7年連続8回目の出場を逃した。

 12位の駿河台大、13位の山梨学大、14位の東京国際大はいずれもケニア人留学生を擁するチーム。駿河台大はスティーブン・レマイヤン(1年)が個人10位(1時間01分56秒)、山梨学大はジェームス・ムトゥク(2年)が同3位(1時間00分46秒)、東京国際大のエティーリは同12位(1時間02分11秒)だった。

 エティーリが転倒しなければ結果は変わっていただろう。しかし、ロードの経験値がほとんどない選手だったことを考えると、指示の徹底が不足していたかもしれない。また地方勢では京産大の27位が最高で、ボーダーラインまで14分35秒という大差がついた。

 次なる戦いは11月5日の全日本大学駅伝だ。今回の出場校(カッコ内は箱根予選会の順位)では、大東大(1位)、帝京大(3位)、国士大(8位)、東海大(10位)、東農大(11位)、東京国際大(14位)、立命大(34位)、大阪経済大(43位)、環太平洋大(45位)が出場する。