現地の空気感を届けるローマ料理を作り続けて
この日、藤田さんが作ってくれたのは『前菜の盛り合わせ』。皿に盛り合わせた前菜はどれもイタリアサイズというか、なかなかに迫力があった。小食な人ならこれとワインでお腹いっぱいとなりそうだ。リエットやプロシュート・コットなどの加工肉も自家製というから手間もかかっている。
パスタは王道、みんなが大好きなカルボナーラ、メニューには『ローマ風カルボナーラ』と書かれている。卵とチーズの濃厚なカルボナーラはワインがクイクイ進んでしまう。
メインのポルケッタはシンプルにポテトを添えただけ。どーんと大きなポルケッタとその思いきりのいいビジュアルに思わず見惚れてしまった。豚肉にハーブなどを巻き込んだイタリアのローストポーク、ポルケッタはローマの名物料理でもある。ソースは、野菜の皮など食材の捨てる部分も余さず投入し、じっくりと旨味をひきだしたフォンド・ヴォーをベースにしている。
藤田さんが大切にしているのはイタリアンのスピリットでもある地産地消。京都の無農薬の野菜や京都の豚肉など、食材はほぼ京都産の上質なものでまかなっている。だからこそ素材を捨てず、無駄なく使い切ることも大切なのだ。
野菜は毎週末に開かれる大原の朝市へ出かけて仕入れたものが9割以上。大原の朝市といえば、地元のとれたて野菜を農家が持ち寄る市場として知られ、京都の有名な料理人も多く通っている。藤田さんも早めに行っては、友人シェフと気の置けないおしゃべりをしたり、情報交換をしたりと 料理人同志のコミュニティの場にもなっているのだ。
京都はイタリアンが多い町。このところはインバウンドの影響もあってかコースに切り替えたり、イノベーティブな料理を出したりする店も増えているという。そんな中にあって、地に足の着いたローマ料理をア・ラ・カルトで食べられるここは使い勝手がすごくいい。パスタと前菜だけとか、ワインを飲みながらいろいろつまみたいろか、もちろんがっつり食べるのもあり。その時のお腹の具合や時間帯に合わせて自由に楽しめる。
『チュネッタバルバ』は今年7月に丸8年を迎えたところ。
「8年やっていろんなことが分かった来ました」と藤田さんは豪快に笑う。その笑顔に会いたくて、お客さんは通ってくるのだろう。そしてこれからもイタリアに通い続け、料理の味を“確認”しながらローマの風と香りを京都に届けてくれるのだ。