取材・文=岡本ジュン 撮影=村川荘兵衛

『ローマ風カルボナーラ』 1700円。仕上げにペコリーノチーズをたっぷりふりかけて

地元料理人も通う秘密のイタリアン

「ローマで食べたこの料理に衝撃を受けて、絶対メニューに入れようと思っていました。オープン当初からメニューにありますが、頼んでくれる人は少ないですね(笑)」と楽しそうにイタリアの思い出を話すのは、イタリアン『チェネッタバルバ』の店主藤田紘一さん。

 京都出身、陽気でおしゃべり好き、家族とフットサルを愛する男。冒頭に書いた、藤田さんが愛する料理というのは、ディナーで出している牛モツを使ったトマトソースのパスタのことだ。

先斗町の人気店で長年料理長を務めた藤田さん

『チェネッタバルバ』があるのは地下鉄四条駅に近いとあるホテルの隣。場所柄もあってか、お客さんは旅行で滞在する人も多い。一年に何度も京都を訪れ、その度にこの店で食事をするというのだから、観光客でありながらもはや常連と呼ぶべきかもしれない。旅先で行きつけを持つというのはなんと素敵な話だろう。

 この『チェネッタバルバ』という個性的な店名がずっと覚えられなくて困っていたのだが、「イタリア語で夕食はチェナ。だからチェネッタは友達との気楽なご飯みたいな感じです」と教えてもらってからはスッと頭に入ってしまったから不思議だ。ちなみに、バルバは「ひげ」と言う意味だそうで、畑のイメージからひげ根にもひっかけている。

大きな窓を豊かな緑が縁取る気持ちのいい空間

 料理人仲間、お客さん、農家、器作家などなど、店をとりまく友人達とフットサルをやっているという藤田シェフ。必然的に地元京都の料理人に顔が広く、横のつながりも強い。店には地元のシェフがフラリとやってくることも少なくない。

 メニューは、昼はコース仕立てで郷土料理にこだわらない、夜は日本人にもなじみが深いローマ料理を主役としア・ラ・カルト。昼と夜で出すメニューもスタイルもガラリと変えている。