黙っていてもいつもの酒が出てくる店でありたい
「料理がおいしいのは当たり前。それにプラスいい雰囲気が大切なんです。空間も美味しくないとけません」と博文さんはきっぱりいう。
何度も来てくれる人の顔は極力覚えるそうで、だんだんと仲良くなって、好きなものをインプットするのも仕事のうち。席に着けば黙ってスッといつものお酒が出てくる、そんな店でありたいという。
市場から仕入れる魚は、ピカピカの刺身や握り鮨になる。初夏のおすすめは『芽ねぎにぎり』で、これはお客さんから鮨屋で食べて美味しかったと言われ、それならと研究して作ったという逸品。いつも同じようでいて、実はお客さんとの交流から店は作られ、育っていくのだ。
開店と同時に一人、二人とお客が増え、やがて店は活気を帯びていく。暖簾を上げて常連らしき人がのぞくと、いらっしゃいませよりも先に、「久しぶり〜」と客席から挨拶が飛んでくる。
毎日食べても飽きない、それでいて美味しさもピカイチ、なのにとってもお値打ち。京都の友人が“愛しのわかば”と呼ぶ気持ちがよくわかる。