担当学芸員の熱意にリスペクト

左・藤田嗣治《十字架の見える風景》1920(大正9)年頃 岐阜県美術館

 日本人画家の作品では、藤田嗣治《十字架の見える風景》が印象に残った。淡い水色で描かれた空と海を背景に、十字架のモニュメント「カルヴェール」が描かれている。藤田の代名詞である乳白色の色面が使われた静謐な美しさをもつ一枚。耳を澄ませば、さざ波の音が聞こえてきそうだ。

 展覧会の出品作は約160点。その大部分は国内の美術館が所有しており、展覧会の開催にあたって30カ所以上の所蔵先から作品を集めたという。日本にも優れた作品がたくさんあり、企画力と構成力、そして作品をコツコツと集める粘り強さで素晴らしい展覧会を作り上げることができる。海外の有名美術館から作品を借りるだけが展覧会ではない。「憧憬の地 ブルターニュ」は担当学芸員・袴田紘代さんの熱意と力がこもった素敵な展覧会だった。