ゴーガンの名画がずらりと並ぶ
ゴーガンとポン=タヴェン派の作品を集めたコーナーは、展覧会のひとつの見せ場。1886年、ゴーガンはパリでの生活苦から逃れるように、ブルターニュを訪問。人々の素朴な生活や厚いキリスト教信仰に魅せられ、数多くの作品を制作した。会場には12点のゴーガン作品が制作年代順に並んでいる。
《海辺に立つブルターニュの少女たち》は現地で暮らす2人の少女を捉えた作品。寄り添って手を握り、怪訝そうな顔をする少女たちの表情に、都会人慣れしていない無垢で純真な心を感じる。《ブルターニュの農婦たち》はオルセー美術館が所蔵するゴーガンの代表作のひとつ。2度のタヒチ滞在を経て描かれた作品で、南洋で培った力強い色彩に目を奪われる。
ポン=タヴェン派の中心的役割を担ったのはゴーガンだが、ほかの画家たちの作品も独自性が強く見ごたえがある。浮世絵のように色面を輪郭線で囲むクロワゾニスムという技法を確立したエミール・ベルナール。《ポン=タヴェンの市場》は平面性が強調された装飾的な画風が印象的で、垂れ下がるリボンの隙間から見え隠れする人物の描き方は喜多川歌麿の浮世絵作品から影響を受けたものだという。
ゴーガンの指導を受け、後にナビ派を創設したポール・セリュジエの作品も見逃せない。《森の中の4人のブルターニュの少女》は、ブルターニュ地方の衣服やコアフ(頭飾り)を身に着けた4人の女性が水辺に集う様子を描いた作品。牧歌的でのどかな趣をもちながらも、女性たちのどこか寂し気な表情から、現地の貧しく慎ましい生活がうかがえる。