画家たちはブルターニュに何を見たのか?

「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」は、ブルターニュをモチーフにした作品約160点を展示する展覧会。国内で“ブルターニュ1本”に絞った展覧会が開催されるのは史上初の試みだという。この試みが、実におもしろい。各画家が同じテーマに取り組んでいるが、捉え方はまったく違う。ブルターニュの何に惹かれ、どんなことを感じ、どのように表現したのか。画家の個性がくっきりと見えてくる。

 たとえば、モーリス・ドニ《花飾りの船》とシャルル・コッテ《悲嘆、海の犠牲者》。どちらもブルターニュに別荘を構え第二の故郷とした画家だが、作品から受ける印象はまるで違う。

モーリス・ドニ《花飾りの船》1921年 愛知県美術館 

 ドニ《花飾りの船》はヨットレースで有名な祝祭の情景を題材にした作品で、色調が明るく、幸福感にあふれている。ちなみにヨットの舳先に日本の国旗“日の丸”が付いているが、これは作品を購入した日本の実業家・大原孫三郎(大原美術館創始者)へ感謝の気持ちを込めて、ドニが追加で描き入れたという説がある。

シャルル・コッテ《悲嘆、海の犠牲者》1908-09年 国立西洋美術館(松方コレクション)

 一方のシャルル・コッテ《悲嘆、海の犠牲者》は海難事故が絶えない港町の波止場にて、溺死した漁夫を島民たちが弔う様子をキリスト哀悼図の構図を用いて描き上げたもの。船のマストが十字架のメタファーになっており、画面全体が重いムードに包まれている。