7年間の絆がシード権を引き寄せた

 2区終了時で19位に沈んだ東洋大。4年連続出場となる前田は3週間ほどの準備で5区に出走した。14位スタートで、「自分で稼ぐしかないと思ったので、ガンガン攻めていきました。本当に覚えてないくらい無心で走ったんです」と目標タイムを上回る1時間11分21秒(区間5位)で走破。チームを11位まで押し上げた。

 補欠登録だった木本は当日変更で8区に起用される。シード圏内までは1分45秒差。見えない背中を必死で追いかけた。

「箱根の借りは箱根でしか返せない。昨年は自分が大ブレーキしたのを復路の方に救ってもらったので、今年は自分がチームを救うつもりでした。昨日の前田の走りがあったから自分もやらなきゃいけないという気持ちになりましたし、前田とは高校時代から7年間も一緒です。前田キャプテンを最後は自分が救うんだという思いもありました」

 茅ヶ崎(6.7㎞地点)を個人10番目で通過した木本は後半に強さを発揮する。17.3㎞で東京国際大をとらえて11位に浮上。最後は10位・城西大に33秒差まで迫った。

 タイムは区間歴代6位となる1時間4分16秒。法大・宗像直輝(3年)とともに区間賞に輝いた。東洋大は9区梅崎が明大と城西大をかわして9位に上がる。3年連続のアンカーとなった清野太雅(4年)は城西大に逆転を許すも、10位で踏みとどまり、18年連続シードを確保した。

 ゴールの大手町で顔を合わせた牛久コンビ。木本は前田に「本当にありがとう!」とねぎらいの言葉をかけられて、胸が熱くなったという。〝鉄紺の絆〟が生んだ〝シード権死守〟だった。

「万全でない選手も起用せざるを得なかったところもあって苦しかったですね。そのなかで、前田と木本がよく走ってくれました。前田は190cmの長身ですが、初めての山で攻めの走りを見せました。4年生世代は学生駅伝で区間賞が一度もなかったんですけど、最後に苦労人の木本が区間賞を取ってくれて、シード権も残してくれたのは大きいと思います」と酒井監督は4年生コンビに感謝の気持ちを述べた。

 ただし、ふたりは納得していない。「3番以内という目標を掲げての10位。すごく悔しい気持ちでいっぱいです」と前田が言えば、木本も「区間賞はうれしいですけど、東洋大は10位前後を走るチームではないので、悔しい気持ちの方が強いです」と静かに語った。

 先輩たちが必死でつないだ鉄紺の襷。次は後輩たちが〝強い東洋大〟を再構築する番だ。