テルモンは美味しいのか問題
──そんななか申し上げにくいのですが、僕、正直いって、テルモンの『レゼルヴ・ブリュット』そんなに好きじゃありません。
なんだって!? 『レゼルヴ・ブリュット』に出会って、これがいいとおもったから僕はこのメゾンを買ったんだ。これがメゾンのシグネチャー。この小さな泡!空気のような軽やかさ!フルーティでフレッシュで……こんないいものを……いや、君が飲んだものの状態が悪かったのか!? ちょっと「エノテカ」で一本買ってきて!
(レミー コアントロー ジャパンのブランドマネージャー様をパシリにしてしまった……)
待ってる間についでに言うけどリシャール・ジョフロワもこれは飲んでるんだよ。
──レジェンドの感想は?
エレガント! ちゅ♡
──そうでしたか……
あ、来た。ありがとう。よく冷えてるよ。どれどれ?
──問題ないですか?
ない。乾杯しよう! In the name of mother nature!
──In the name of mother nature! うーん……
なんだよー
──これは好き嫌いだとおもうのですが、この軽快感はほかのシャンパーニュでは得難いとはおもいます。アタックは甘い印象があるんだけれど、重くないし、そこから苦味と穏やかな酸味と展開していって、余韻はそんなに長くない。
次の一杯を飲みたくなるこの感じはテルモンのなかでもレゼルヴ・ブリュットにしかない。しかも3年も熟成しているから複雑味も感じられるだろ?
──不味いって言っているわけじゃないですよ。僕にはピンと来ない。日本だと、甘辛なソースには合うんじゃないかなぁ。うなぎの蒲焼とか。
今度、マグナムで持ってきて君の心を変えたいよ……
──でも来年になったらまた、この味になるかどうかはわからないんですよね?
そうだね。そこを決めるは自然だから。いまのレゼルヴ・ブリュットは2017年ヴィンテージが基本だけれど、次は2018年になる。泡の小ささや軽快感は継続するけれど、最終的な味わいは同じにはならない。
──であれば、次は僕が褒めて、ジョフロワさんは、うーん……ってなる可能性もある。
それがないとは言えないね。テルモンはセラーでよりも畑で仕事をする。商品としては、同じものを繰り返さないのはリスキーだけれど、それがテルモンのステートメントだから。
──一方で、なのですがロゼは面白いとおもっています。
なんでこれが美味しいかわかる?
──ピノ・ノワールを使ってないから?
それとシャルドネが87%だから、ほぼブラン・ド・ブランなんだ。それも独特の個性になっている。
──今回は『ブラン・ド・ノワール』を日本でお披露目ですが、こっちはムニエ87%だったり?
それはないよ。たしかにダムリーはムニエの名産地だけれど、ピノ・ノワール61%にムニエ39%というバランス。もちろんこれも、今後の自然次第で、ムニエがもっと多くなる可能性はあるけれど。
──今回はもうひとつ、亜硫酸塩無添加の『サン・スフル』がお披露目ですね。個人的には今回の新作ではないんですが『レゼルヴ・ド・ラ・テール』が好きです。オーガニック云々は抜きに、ただ、飲んでみて素晴らしいシャンパーニュだと感じます。そして『レゼルヴ・ド・ラ・テール』はオーガニック認証を受けていますよね。それで質問なんですが、今後、亜硫酸塩無添加かつオーガニックという方向でテルモンのシャンパーニュが造られるなら、この2商品は要らなくなりませんか?
正論を言うね。まず亜硫酸塩無添加についてだけれど、これは主にブドウをプレスしたときに亜硫酸塩を添加しない、という意味なんだ。とはいえ、亜硫酸塩に関しては0が必ずしも正解、とまではおもっていない。表現のひとつだけれど、絶対じゃない。
一方、オーガニック認証に関して言えば、これがテルモンの未来だ、と言える。つまり、今後、すべてのキュヴェが『ド・ラ・テール』レベルのオーガニックのブドウから造られるんだ。メゾンを買ったとき、セラーには古いワインが沢山あって、最古のものは1964年のロゼだった。
これは記念として残しているけれど、かつてのテルモンのシャンパーニュも素晴らしいんだ。いまは『ヴィノテーク』という名前で2005年のブラン・ド・ブランを出しているから、それでかつてのテルモンを確かめることができる。僕の夢は、次の世代に、僕たちのテルモンの『ヴィノテーク』を飲んでもらうことだ。
──『レゼルヴ・ド・ラ・テール』のスタイルにテルモンの未来があるのだとしたら、とても期待します。今日は色々と不躾な質問もしましたが、ありがとうございました。
レオも凄まじい勢いで質問してきたからね。ちょっと思い出したよ。