良き理解者と指導者との出会い
すっかりジンの魅力に取り憑かれた中澤さんは、その後さまざまな場所でジンを飲み、魅力を探り始め、そこでまた新たな可能性と人材に出会うことになります。それは札幌にある「Bar nano」というバーで飲んだ5種類のジンをブレンドして作ったカクテル“ジントニック”の作り手、富田さんでした。
バーテンダー富田氏のクリエイティビティーとクオリティーから生み出された素晴らしい味わいに、またもや衝撃を受けた中澤さんは、“ジン”の持つまた違う可能性を強く感じ、新しい事業はこれしかないと強く思い始めたのだそうです。その出会いは大きく、富田さんは今も良きアドバイザーとして「トーキョーハチオウジン」の製作に関わっています。
アメリカへ蒸溜の勉強を
うっすらと輪郭を持ち始めた新しい事業、八王子で蒸溜所を作りたいと思い始めた中澤さんは、まず当時の社長である父やスタッフを説得して理解を得た後、勉強のためアメリカのシカゴにある蒸溜所KOVAL社へ向かいCEOのRobert Birnecker氏から直々に指導を受けます。KOVAL社を選んだのは、ここの蒸溜酒のクオリティーだけでなく、生産規模や背景など全てにおいて自分の目指す蒸溜所にとってぴったりだと直感的に感じたからなのだそうです。
そしてこの頃から、地域性やハーブの特徴をブランディングとしていないスタンダードで伝統的なジンを東京という場所で作りたいという、自身の目指す方向性も少しずつ固まり始めます。
KOVAL社での研修においてその思いはさらに強まっていき、その構想をRobert Birnecker氏に相談したところ、良いアイデアだと背中を押してもらえたこともあり、蒸溜所設立と“ジン”作りはさらに現実味を帯び始めます。
このコンセプトと思いを形にしてくれる人に
お酒作りに関して、応援者や協力者を得た中澤さんでしたが、今度は製品にするときのデザインや醸し出す空気感、世界観をどのようにしていくかというブランディングという部分に悩み始めます。
そこで、以前から交流のあったデザイナー・クリエイティブディレクターの辰野しずかさんへお願いをすることになります。辰野さんは、その物の持つ背景や深層の中からポジティブな部分を見つけ、引き出し可視化して、デザインから世界観まで作り上げることに定評があり、またそのデザインは凛としてスッと芯が通った魅力があります。
辰野さんを中心に、グラフィックデザイナーの小熊千佳子さんをはじめブランディングチームが作られ、実に2年の歳月をかけて中澤さんの思いや経験を反映した「トーキョーハチオウジン」は少しずつ形になっていったのだそうです。