使われないブドウからビールができる
と、そんな話は余談であって、ポイントは、ブドウ品種や醸造だけでなく、その周辺もまた日本で盛り上がることが、産業としてのサステイナビリティを考えるにあたって欠かせない、という提言だ。
もちろん、シャトー・メルシャンでは、ボトルの軽量化や、段ボール箱を6本入りではなく12本入りにする、といったパッケージングの合理化など、世界をリードするワイナリーと同様の地道な環境負荷低減にむけた努力も進めている。
また、それが含む酸などによる周辺自然環境への悪影響が懸念される、ブドウの搾りかすを、園地内で堆肥化するというのも定番ではあるけれど、ひとつひとつの畑の規模が小さな山梨では、シャトー・メルシャンのような大手はいいとしても、小規模生産者はなかなか苦慮する問題だ、ということも教えてくれた。
おもしろい取り組みとしては、ワインに使わなかったブドウをクラフトビールにしたところ、これがなかなかに人気だ、というものがある。ブドウというのは、果物のなかでも、トップレベルに甘くなる。やりようによってはバナナより糖度があがる。そしてこの糖が、醸造の工程でアルコールに変わるのだけれど、雑な言い方をすれば、ワイン用ブドウというのは、甘いほど望ましい。
甘いぶどうは、糖分とともに、たくさんの栄養を、その身に蓄えている。そのため、ひとつのブドウの樹が生み出した栄養が、より一房のブドウに集中するよう、あえて、房の量を減らすという栽培方法が取られるのだけれど、この目的で、ある程度、ブドウの体をなした房を、樹から切り落としてしまう、というのは定番のテクニックのひとつだ。
このブドウは普通であれば、畑の土に還元されてしまうのだけれど、ワインほどのアルコール度数が必要ではなく、またワインとは味わいや香りの評価軸のことなるビールでは、このあえて使わないブドウが使える、ということで、Far Yeast Brewing社が山梨応援プロジェクトという企画の一環で、シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーとのコラボレーションビールを生み出したのだ。
昨年10月に登場した『GRAPEVINE2』というのがそれなのだけれど、まだ手に入れることができる。ワインとはまた違った魅力あるお酒として、日本ワインファンにご紹介したい。