この映画のストーリーはこうだ。

 1970年に3枚目のアルバム『世界を売った男』を発表したボウイだったが、評判はさんざんで、そもそも注目もされない。とくにアメリカではそうだ。

 この時点でのボウイは1969年にアポロの月着陸にタイミングを合わせた宇宙飛行士の歌「スペイス・オディティ」と、変調加工された声を使ったコミック・ソング「ラフィング・ノーム」がかろうじてヒット曲と呼べるもので、それも主に本国イギリスでの話。アメリカではレコードこそ出ていたものの、ほぼ無名の存在だ。

 アメリカのレコード会社のマーキュリーは「スペイス・オディティ」のようなポップな曲を期待してボウイと契約したものの、契約後に出来上がったアルバム『世界を売った男』は暗くてヘヴィなサウンドとやはり暗く哲学的な歌詞が乗ったアート作品だった。

 このアルバムの制作時期はボウイにとっていろいろ悩みが多く、ドラッグの影響もあってこのような作品になった。後年ニルヴァーナがカヴァーして話題になったアルバム・タイトル曲など、いい曲もあるが全体的に地味で暗い。

 当然レコード会社からは不評でアルバムのプロモーションは皆無に近く、シングル「オール・ザ・マッドメン」もプレスまで終えた段階で発売中止になってしまう。シングル曲がないということはラジオでもかからないので、絶望的な状況だった。

 この事態に対して、ボウイのマネージメントが起死回生の手として打ったのがアメリカでのソロ・ツアーだった。ソロ・ツアーといっても大袈裟なものではなく、アコースティック・ギター一本を持って小さなクラブやパーティーで弾き語り演奏をするというもの。合わせて全米各地で雑誌やラジオの取材を受けてアルバムの宣伝につなげるという思惑だった。

 映画は、このアメリカに向かう飛行機内のボウイの観る夢から始まる。不穏な夢だ。

 案の定、入国審査ではこのビザでは商業的な公演はできないと言い渡され、さらに手荷物にあったこの頃のお気に入りだった男性用ドレスで怪しまれる。

ドレス姿でオバーマンを困らせる

 おもしろい。のっけから物語に引き込まれていく。

 ボウイを演じるフリンも、似ていないといえば似ていないのだが、ボウイの所作や言葉遣い、イントネーションを相当研究したようで、似ていないのにふと本物のボウイがスクリーンの中にいるように錯覚してしまう。

 物語は、空港に迎えに来ていたレコード会社の冴えない宣伝マンのロン・オバーマンとの全米のプロモーション・ツアーが主軸となり、そこにロンドンでのボウイの暮らしや悩みがフラッシュバックとしてインサートされていく。

旅の途中でぶつかるふたり