User Data Platformでユーザーデータを統合

 これらの仕組みの構築に当たって課題となったのは、「データ」の問題でした。当社においても、顧客の行動データは個別に取得・管理されていたり、収集できていなかったりと、あらゆる活動のベースとなるユーザーデータが管理・運用できる状態に至っていませんでした。

 まずこの点の解決を図るべく取り組んだのが、「オンライン/オフラインを融合させたユーザーコミュニケーションの強化」に向けた「CASIO IDによる『登録データ(明示的ID)』の統合」、そして「システム共通IDの新たな運用」でした。こうして新たに整備されたユーザーデータの管理手法により、下図のようなUser Data Platformが共通基盤化されました。

 なおUser Data Platformの実現に当たっては、構想・設計・実装・運用までをつなげて考える必要があり、マーケティングとテクノロジーの両面のプロフェッショナル人材を集約したインキュデータにご支援いただきました。

データ活用によって生まれた三つの施策と成果

 これらの取り組みで顕著な成果を得たのは、マーケティング領域です。あらゆるユーザーデータをUser Data Platformに集約したことで、次の取り組みが実現しました。

 まずは「ユーザー理解」です。当社製品のユーザーは、提供商品の特性として「毎日買う」よりも「何年かおきに1個買う」場合がほとんどです。ユーザーの行動データなどから、「ライフスタイルや好みなどを示した嗜好性」「カシオの製品を今買いたいという気持ちを示したHOT度」「カシオやG-SHOCKなどへの愛着を示したロイヤルティ」の3つの軸でユーザーを分析し、状況を洞察しています。

 それら嗜好性・HOT度・ロイヤルティが分かることで、個別のユーザーに対して最適なアプローチの姿が見えてきます。それが「One to Oneマーケティング」です。ここでは「顧客の購入意向が高まったタイミングでのメール配信や広告」「顧客タイプに応じた適切なコンテンツの出し分け(製品/メッセージ)」「優良顧客に対する特別なサービス提供(ロイヤルティプログラム)」を行うことで、短期での購入促進を行うと共に、中長期的にロイヤルファンになって頂くことを目指しています。

 さらに「効果測定」では、ここまでに得られたデータをより深く分析しています。これまでにも商品広告を打ち出した後にCPA測定などを行ってきましたが、例えば「すごく売れた」商品があった場合、それが「開発力(商品そのものの魅力)」「マーケティング」「流通」のうち、どれに起因しているのかまでは分かりませんでした。ユーザー単位での行動データなどが分析可能になることで、施策に対する効果が明確になり、施策の改善だけでなく、次なる製品の開発などにも生かすことが出来るようになります。