※本コンテンツは、2021年3月17日に開催されたJBpress主催「第5回 ワークスタイル改革フォーラム」Day1のセッションⅣ「総務出身の社長が考える~ES(従業員満足)を叶える「働く空間」の安心・快適~」の内容を採録したものです。
株式会社クボタ計装
代表取締役社長
吹原 智宏氏
リモートワークや感染症対策など総務部門の課題は山積している
私は1990年に株式会社クボタに入社し、人事・総務、営業・マーケティング部門を経て2019年にクボタ計装の社長に就任しました。
総務の仕事には誇りを持っており、社長就任以降も、メンタルヘルスマネジメント検定を受けたりキャリアコンサルタント資格を取得したりと、働きがいのある職場環境の整備に尽力しています。
人を大切にし、活かすことが企業の生命線であると確信しており、働き方が大きく変化する今こそ、総務の腕の見せどころであるとも考えています。
この考え方が、講演のタイトルにもつながってくるわけですが、タイトルにある「働く空間」と、クボタのイメージがつながらない方も多いかもしれません。確かに、クボタは農業機械や水道管・鉄管、環境装置などで知られる会社です。しかし実は、電子部品や薬品などを製造するクリーンルームに設置される空調機の設計・開発・製造においても50年の実績があるのです。
講演では、総務出身の社長である私が、クボタの水と空調機の技術を活用した「働く空間」に関するお話をいたします。
コロナ禍以降、多くの企業はさまざまな課題を抱えています。リモートワークやジョブ型雇用、感染症対策など、総務部門に関連する課題も山積です。
これらの課題に対し、総務の皆さんはどう対応しているでしょうか。必要最小限の対応で手いっぱいという方も少なくないかもしれません。ただ一方で、現在の変化を前向きに捉えれば、これまで潜在的にあった従業員ニーズを幅広く解決できるチャンスと見ることもできます。攻めの姿勢を見せれば、総務の方々が従業員の方から受ける評価も変わってくるのではないかと思います。
当社では、現在の課題を解決するには「より安心」「より快適」がキーワードになると考えています。このキーワードに関連する施策においては、コストをかけてでも中期的視点で地に足の着いた施策をとるべきです。
「より安心」「より快適」に関して、ご存じの方も多いWell-Beingという概念を通して具体的に考えてみます。Well-Beingを図にすると、ピラミッド型の3つの階層で表すことができ、下から「医学的」「快楽的」「持続的」となります。
土台となる「医学的」とは、心身における機能不全や病気の状態を防げる状態です。対策すべき課題には、過重労働、作業安全、喫煙・受動喫煙、危険物・有害物質、放射能、粉じん、ウイルス感染、食中毒などがあります。
中段の「快楽的」とは、気分が良い、快適といった主観的な感情の質が良い状態です。対策すべき課題には、設備(机、椅子)、高温/低温、多湿/乾燥、におい(トイレ、体臭)、騒音・振動、ほこり・花粉、照明・光彩などがあります。
ピラミッドの頂点にあたる「持続的」とは、人間が潜在能力を発揮し、存在意義を感じ、周囲の人々との関係の中で生き生きと活動できる状態です。対策すべき課題には、キャリアと自己の不一致、ハラスメント、人間関係、考課制度不備、コミュニケーション不足などがあります。
これらの課題への対策が進むことで働く環境が改善され、健康や存在意義の高まりが実現できると、生産性や創造性が高まるとされています。
総務部門にとっては、この多数の課題に対し、個人、グループ、集団・コミュニティといった場面に応じてコストと運用の兼ね合いを考えながら、どんな施策を打っていくかが腕の見せどころということになります。