基本となる技術は、高級SUVの元祖レンジローバーと共通で、新型ディフェンダーはレンジローバーのディフュージョン、もしくはプロ仕様ととらえることもできる。

 ディフェンダー110は全長×全幅×全高=4945×1995×1970mmというサイズは、トヨタの現行ランドクルーザーとほぼ同じ。個人が日常的に使用するには限界に近い大きさだろう。

 2リッター直4ターボ・ガソリン・エンジンは最高出力300ps/5500rpm、最大トルク400Nm /2000rpmを発揮する。車重は2240kgと、このサイズにしては比較的軽量なのは、アルミ・ボディというだけではなく、エンジンが4気筒ということもある。

 走りだすと、いかにも大きなものを操っている感覚がある。アクセル・ペダルをぐいと踏み込むと、2000rpmあたりから2リッター・ターボが明瞭なトルクを生み出し、活発に走る。滅多なことでは3000rpmを超えることなく、8速ATはシフトアップしていく。

 タイヤは18インチの255/70で、70だからもうちょっと当たりがソフトなのかと思いきや、グッドイヤー・ラングラー・オールテレーン・アドベンチャーという長い名前のオン/オフ・ロード兼用のタイヤのせいもあってだろう、冒頭記したように「スパルタン」と表現したくなるほど硬い。

自然吸気エンジンだったら4リッターV8にも匹敵する400Nmという大トルクをわずか2000rpmで生み出す2リッター4気筒ターボ。アルミ・ボディのおかげで比較的軽い、といっても2240kgの巨体を不満なく走らせる

電気自動車を思わせる

 驚くのは静粛性だ。2リッター4気筒ターボは、8速ATに変速を任せていると80km/h巡航は1500rpmぐらいで、エンジンはなりを潜めていて、電気自動車を思わせる。アクセルを踏み込むと、6400rpmあたりからイエロー・ゾーンのこのエンジン、高回転までシューンッと回る。回してやれば、巨体は素直に加速する。ステアリングはやや重めで手応えがあり、頼りになる道具を操っている感もある。

 ダッシュボードから生えているガングリップみたいなシフトレバーも道具っぽい。新型ディフェンダーがもたらしてくれるのは、日常生活の冒険だろうか。

 いや、そうではない。働くことの喜び。ということばを思いついた。質素な内装のディフェンダー110は、機能のみを純粋に表現している。機能とは働くことである。働くことにイギリスの貴族もニッポンの平民もないでしょう。労働は神聖で尊い。

 え~っと。辻褄があっていのかどうか、ともかくです。でっかいカラダに小さなエンジンを積んだディフェンダーは、着飾ったクルマにはない清々しい思いを試乗後の筆者にもたらしたのでした。

英国版ジープ、という風情が漂うインテリア。運転席と助手席のあいだにセンターコンソールがないのはこの標準モデルだけ。3列7人乗りもある。ちょっと荒れた田舎道やオフロードのほうが乗り心地がいい、というのが筆者の実感