——自動化も含め、新しいことを始める上で、現場からの抵抗はありませんでしたか。

井戸氏 最初はありましたよ。でも、僕たちの仕事は何なのかと自問自答したときに、僕たちは販売支援の印刷物しか作っていなかったんですね。とはいえ、印刷物はどこの機械で印刷しても一緒。

 その前工程で差別化するしかないし、“紙の上にインキをのせること”ではなく、“お客様の商品やサービスを売るお手伝いをすること”が僕たちの仕事だと考えたほうが、スッキリすると思うんです。

 そうやって新しい領域に手を広げるハードルを下げてきたので、今では新しい変化を楽しんでもらえるようになっていると思います。

——印刷業界において、最も課題に感じていることは何ですか。

井戸氏 紙の使用量はこれからも落ちていきますから、普通にやっているとどんどん落ちていくマーケットですよね。そんな中で、自社の強みを生かして新しいことにチャレンジしていかなければ、生き残ることは非常に難しいと思っています。

 しかし、これは何も印刷業界に限った話ではありませんよね。日本の人口が減っていく以上、高度経済成長期と同じやり方を続けているだけでは、生き残っていけないというのはどこのマーケットでも同じであるはずです。

 今まで正解だと思っていたことは、これからの正解ではないということを、肝に銘じておかないと。世の中の多様化に臨機応変に対応していくことが大切なのではないでしょうか。

 また受注産業といわれていた印刷業界ですから、お客様の要求のみを聞いていればよかった時代もありました。でも今はいろんなところに足を運び、お客様の訪れている変化を実際に見て感じることも重要だと思っています。私が毎週東京に来ているのもそういう理由です。東京と大阪だと圧倒的に情報量が違います。

——昨年、ベトナムにフジプラス・ダナンを設立されて、グローバル展開も初めておられますが、今後はどのような展開をお考えですか。

井戸氏 Web to PrintやAPI to Printといったデジタル印刷をより円滑に流していくことが増えていけば、拠点の場所について国内外の差はあまりないと思います。

 納品先が日本の仕事を海外で請けて、日本で印刷して納品する、という仕事を始めていますが、こうした流れが十分広がっていく可能性はあると思います。ダナンの拠点には非常に優秀な方々が集まってきていますので、日本と連携しながら、その方たちと一緒に動いていくのを楽しみにしています。

——では最後に、印刷業界で挑戦する次世代の若手社長に向けて、メッセージをお願いします。

井戸氏 不況業界はあっても、不況会社はないと思っています。言い訳をし出したらキリがないけど、言い訳せずにどれだけ努力していけるかが重要。

 何かを変えると、いろいろなところで軋轢が生じたり、反発があったりするのですが、逆にそこで何も問題が起きなかったら、成長もありませんよね。

 苦しみながら、楽しみながら、常に起きる問題の解決に向けてできるだけ早く動いていけばいい。新しい分野にチャレンジをして、苦しんだり、楽しんだりする毎日のほうが刺激的で楽しいですよ。そしてそんな社長のことを社員たちはみんな見ています。

 今回のインタビューのような記事をちゃんと読んで(笑)、情報を仕入れようとしている姿勢こそが重要ではないかと思います。