キーワードは“デジタル×紙×マーケティング”
ーただ、最近では中小の印刷会社でもデジタル印刷に取り組むところが増えているように思うのですが。
郡司氏 それは単純にアナログ印刷をデジタル印刷に置き換えているのではなく、印刷業界のビジネス構造に変化が起きていると捉えるべきでしょう。
今までの印刷業界は受注産業でした。受けた印刷の仕事を完璧にこなすのが目標になっていました。高い品質の印刷物を作ることを追求してきたわけです。ただ、商業印刷の場合、目的は印刷物を作ることではありません。その印刷物で効果を上げること、つまり売上を上げることです。
例えば、パンフレットは今まで一冊で豪華なものが良いとされてきました。しかし、生活レベルが上がって、消費者のニーズが多様化するようになると、印刷物にバリエーションが求められるようになってきました。いろいろなパターンのパンフレットを用意して、どれが最も効果が高いのかを試すようなスタイルになっています。
そこに拍車を欠けているのがIT化です。クライアントが膨大なマーケティングデータを持ち、顧客をセグメンテーションするようになって、印刷物もそれに対応することを求められるようになってきました。現在ではO2Oマーケティングを実践するところも出てきて、個々のお客様のニーズを探るようになっています。
ーマーケティングの進化に伴って印刷会社に対するニーズも変わってきているということですね。
郡司氏 マーケティングの進化というより、顧客のニーズが見えにくい時代になったことで、どうしたら良いのか一緒に悩んでくれる印刷会社の方が、喜ばれるようになってきています。完璧な印刷物を作るよりも、どちらが消費者の反応がいいのかを試すA/Bテストを提案していく。クライアントはそこに印刷会社の新たな価値を見出しているんです。
JAGATでは30年以上にわたってpageという印刷業界向けのイベントをやっていますが、このイベントもここ3年間は“デジタル×紙×マーケティング”というテーマでやっています。マーケティングデータと連動して紙のデジタル化を進めるべきだという考え方です。
今年はそれがこれからの食い扶持になるという意味を込めて“デジタル×紙×マーケティング for Business”としましたが、やっと本気で取り組むところも増えてきましたが、まだまだ少ない。早く始めたところは大きなアドバンテージが得られるだけに、どの印刷会社にとっても大きなチャンスだと思いますね。