デジタル時代を迎えて印刷というビジネス自体が伸び悩む中、印刷業界にはどんな未来が待っているのだろうか。印刷および関連産業の発展、貢献を目的として1967年に創立された内閣府認定の公益社団法人日本印刷技術協会(略称・JAGAT、ジャガット:Japan Association of Graphic Arts Technology)専務理事の郡司秀明氏に印刷業界の取り組みと将来の可能性について話を聞いた。
日本の印刷技術レベルは世界一
ー日本の印刷業界は欧米に比べてデジタル変革が遅れているという指摘もありますが、どう思われますか?
郡司 秀明氏(以下、郡司氏) 遅れているという表現は適切ではないと思います。日本人はどんな分野でも高い改良する能力を発揮してきました。印刷の世界では異なる印刷物を組み合わせてコストを最適化するギャンギング*の技術に優れていて、アナログ印刷でも低コストを実現してきました。
加えて日本の印刷品質は世界一です。高い品質の印刷物を低コストで作れるために、あえてデジタル印刷に向かう必要がなかったのです。イギリスで誕生した印刷通販はドイツで改良されましたが、日本がさらにリファインして群を抜いて高いレベルに達しています。
一時期はデジタル印刷の方が安くできると言われてきましたが、コストという面でもアナログ印刷で見合うようになっています。だからアナログ印刷が今でも主流なんです。今では印刷会社が印刷通販を利用するほどです。
ー欧米がデジタル印刷にシフトしているのは何故なのでしょうか。
郡司氏 アメリカではギャンギングのような熟練の技より、新しい機械を使ってスイッチ一つである程度の印刷物が安く早くできた方が合理的だと考えています。だからデジタル印刷が一足早く普及したのではないでしょうか。
*異種多面付けという面付けの一種