10年後の自分と印刷業界

-では10年後の未来に向けて皆さんはどうありたいですか? そして周囲の先輩や後輩にどんなメッセージを送りたいですか?

相澤:今までは技術職だということを言い訳にして、外部とのコミュニケーションを積極的には行っていませんでしたが、今後は営業部門とも積極的につながりをもって、面白い仕事を自分から取りにいけるようになりたいですね。そのためにも今回のように同業種の皆さんとお話ができる場があれば、どんどん参加して刺激をもらいたいと思います。

石原:私は営業職ですが、相澤さんと同じ気持ちです。固定概念を持っていることが仕事をつまらなくする最大の原因だと思っていますし、これから印刷業界に参画してくれる後輩たちとも意思疎通をきちんと行えるように、進んで新しい変化に絡んでいき、楽しみながら仕事をしていきたいですね。世代を超えたコミュニケーションも本当はもっと多くやっていきたいです。

佐々木(拓):先ほどお話をしたような新しい枠組みの変化に向けて、私なりに考えている具体的なアクションを常に起こしていると思います。

太田:私は、会社ではなく自分宛に仕事が来るような、そういう存在になりたいと思うので、「無理しない働き方」ではなくて「したい無理だけする働き方」を心掛けています。周囲の先輩がまさにそういう働き方を体現して充実した顔を見せてくれていますし、私も後輩たちにそういう顔を見せられるようになりたいです。

佐々木(貴):私も先輩や上司と後輩、部署間をつなぐ「架け橋」のような存在になりたいと考えています。これから確実に印刷の技術は劇的に進化しますし、1つの目標に向かっていくにしてもさまざまな手法を用いることが可能になるはずですから、これから業界に入ってくる人たちにもそれがどんなに面白いことなのかを語れる人間になりたいと思います。

相澤:佐々木(貴)さんのような先輩がいてくれて、新しい世界をたくさん見せてくれることを私も期待しています。

[取材を終えて]
 営業職・技術職・企画職など、異なる役割を担う参加メンバーではあったものの、共通して伝わってきたのは、デジタル変革時代とそれが導きだす未来へ向けて自社や業界の変革に自らも積極的に携わりたい、という意向だ。メンバーは皆、「デジタル印刷をはじめとする最新技術を導入している」点や「従来とは異なるミッションを印刷のプロとして果たしていこうとしている」点など、前向きに今の仕事と向き合っていることをひしひしと感じた。一方で、市場ニーズの変化や技術革新が加速度を増して進んでいく中、最前線にいる彼ら彼女らの日々の活動の中では、都度生まれる新しい課題に対して戸惑いを多く感じることもある様子も垣間見えた。

 とりわけ多くの意見が集中したのが「世代感ギャップ」。このことは印刷業界に限らず、統一された価値観のもとマスプロダクションの時代で凄まじい成長を築き上げてきた全業界に当てはまるものと思われるが、「平成生まれ世代」における働くことへの価値観やコミュニケーションの方法に関する相違や温度差はあって当然ともいえる。デジタルネイティブな育ち方をしてきた平成生まれ世代にしてみれば、「もっと普段の仕事にもこれまでのやり方に固執するだけでなく、より積極的にデジタルを採り入れていきたい」という思いを抱いているようにも感じられたのも事実ではあるが、少なくとも、今回集まった若手キーパーソンたちは、過去を否定するのではなく過去の財産を築き上げた世代をリスペクトし、先輩たちとともに融合されたやり方で10年後の未来を一緒に創っていきたい、という意欲が伝わってきた。すでにデジタルの先端技術やノウハウは職場に浸透しはじめているからこそ、それを活かすヒトと組織とコミュニケーションのあり方もあわせて変革できた時、彼らが描く新しい未来が現実のものとなるはずだ。