DX実現への道
これまで申しましたように、世間でよくある悪い例は、「DXで何をしたいのか?」という具体的なイメージがないまま「モノに飛びつき」、他社事例を調べてうちでも導入できるかもしれないとやみくもにトライしたり、PoCを作ってみたものの、「そもそも何をやりたいのか?」がないので、結局は途中で止まってしまう例です。
そもそも昔から日本人は「カイゼン」が得意とされてきました。私は、DXとはカイゼンするための手段としか捉えていません。しかし、DXが分からないからという理由で、AIやIoTといった「モノ(DX技術)に飛びついて」どんどん進めてしまうというのはこれは間違いです。これを逆転させ、まずは「やりたいこと」を最初に考え、「やりたいこと」が見えてきたら、専門家に相談し、組織活動へと舵を切ることで正しいDXの実現にたどり着けます。
肝心な「カイゼンネタの探し方」についてですが、業務効率化を行うためには、まず業務を棚卸し、整理、可視化する必要があります。「カイゼン」のネタというのは、いわゆる個人業務や部門業務などの業務と業務の境界線に隠れています。しかし、「カイゼン」ネタ以前に、そもそもどういった業務に自動化の可能性があるかを知らなかったり、複数部署にまたがった業務プロセスの全体像を把握している人がいないなど、「カイゼン」ネタ発見のハードルが高い場合も多いです。このような場合には、3つの有効な方法があります。
1つは、人材面でのアプローチです。この手の相談を私はコンサルタントとして十数年受け続けてきました。「カイゼン」ネタを探すためには組織を横断的に見ていく必要がありますが、日本企業は縦割りが多いため、自社のビジネスを全部知っている人材は稀有な存在です。これまでは、こういった業務改善における課題の可視化を外部コンサルタントに依頼することが一般的でしたが、最近は、社内で「広範な業務理解を有する人材」を育成する例も出てきています。これは、「業務横断的な人材」を育成しないと成長が難しいと企業が気付きだした証と言えるかもしれません。
一方、業際を探る作業を省力化するやり方も出てきています。「プロセスマイニングツール」を用いて、例外処理や業務上のボトルネックを発見する手法です。これは、業務システムにおけるイベントログを入力データとして、業務プロセスを再構成、可視化し、分析するというものです。レイヤーズ・コンサルティングでは、プロセスマイニングツール「Celonis」(セロニス)を用いたトライアルを行っています。また、DXを用いたイノベーションのパターンをヒントに問題所在を逆サーチできることもあります。