「予測と実現の逆転」の発想

 私どもがイノベーションを唱えると、「イノベーションの重要性はもうよく分かっています」と仰るお客さまがいらっしゃいます。もちろん、「イノベーション無き企業は滅びる」「イノベーションの起爆剤はデジタル技術である」と誰もが頭では理解されていますが、結果的にイノベーションにはつながっていないのが現状です。

 では、まず下の絵をご覧ください。

出典:「武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50」山口 周/KADOKAWA 

 それでは、皆さんにお聞きします。「イノベーションってなんでしょうか?」この絵に出てくるiPadによく似たものは、パーソナルコンピューターの父と呼ばれるアラン・ケイが、1972年に発表した論文の中に登場する「DynaBook」という未来のパーソナルコンピューターの姿です。

 この絵をご覧になってあなたはどう思いますか?「すごい、40年以上も前に未来を予測していたんだ」と思ったとすれば、その解釈は残念ながら間違いです。アラン・ケイは、未来を予測してこれを描いたわけではありません。彼がやったのは「こういうものがあったらいいな」と考えて、そのコンセプトを絵にし、それが実際に生み出されるように粘り強く運動していたことです。
 
 これをDXに当てはめてみると、いま世の中ではロボットが流行っているようだから導入してみよう。という「モノに飛びつく」考えではなく、わが社はここが非効率的だから、こうしたら効率化できるのではないかという逆向きの発想が重要なことが見えてきます。結果的に、何かを実現させるための手段が、ロボットであれば導入したらいいし、それがAIであれば活用したらいいのです。
 
 ここで言えるのは、「やりたいことのイメージが先で、それを実現させるため模索し、実現させる」という流れが原則であるということです。