既存事業と新規事業を分けた“2階建て経営”が不可欠に

 この2年間の変革と人材育成を通じて、成果と課題も見えてきました。成果は、デザイン思考とアジャイル開発の手法を用いた、AIチャットボット「CHORDSHIP」の事例です。お客様との徹底した共創を通じて、富士通の新たなソリューションの創出につながっただけでなく、従来の個社の受発注案件の横展開といったビジネスモデルからの脱却も可能になりました。情報システム部門ではなく、事業部門から直接、RFP(提案依頼書)なしのご依頼も増えていますし、AI適用のコンサルティングビジネスは着実に積み上がっています。

 お客様の真のDXのパートナーを目指し、Pivotalとの提携も実施しました。同社のグローバルで培われた知見、リーン&アジャイルの開発手法を吸収し、SoE(System of Engagement)とSoR(System of Records)の両輪でお客様の価値創出を支援すべく、2018年10月には、「富士通アジャイルラボ」も共同で設立しました。お客様の意識が変化する中で、今後はアジャイルスペシャリストの拡大にも注力していきます。

 一方の課題は、既存事業の効率化と、新規領域の創出は分けないとできないことです。明確に分けた“2階建ての経営”が必要だということです。課題解決型・請負型モデルの1階と、価値共創型・サービスモデルの2階とでは価値観が異なります。

 1階は、PDCAを回す、安心安全が最優先、品行方正な人材がルール通り決められたことをきっちりやる、そして管理する。標準化してコストを下げるといった価値が重視されます。しかし、DXの世界で戦っていくためには、そんなスピード感では間に合いません。2階は、PDCAではなくて、OODA(Observe、Orient、Decide、Act)、安心安全よりも、ビジネスアジリティーを優先します。品行方正、言われたこときっちりというよりは、志を持って突破していく。そういう人たちが自律して、倫理観を持ってやっていく。標準化よりは変化への対応力。こういった価値観の人材を探して、あるいは外から持ってきて、2階でビジネスを立ち上げていくのです。

 2年間の経験で私が学んだことは、DXがうまくいかないのは、トップは危機感を持ち、DXの推進幹部を決める。優秀な人材に研修を受けさせるが、何も生まれないというケース。うまくいくケースは、探索型人材を社内外から見つけて、志を確認し、本物を絞り込んで、事業化を支援する。そのための安全地帯をつくることです。

 これまでの人材育成、研修プログラムをベースに、「Fujitsu Digital Business College」を2017年からお客様向けに提供しています。実践的なプログラムで、デジタルビジネスをけん引するビジネスリーダーの育成を支援していきますので、ぜひ、ご参加ください。

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