21年のチャイナタウン焼き討ち事件

 今回の選挙にもう一つ国際社会が神経を払うのは、2021年11月に反ソガバレ派のデモをきっかけに、貧困層の若者がチャイナタウンを焼き討ちするという暴動事件がおきたこともある。この事件を契機に、ソガバレ政権は中国と警務協力、安全協力協定を結ぶ流れになった。

治安維持のためにかけつけたニュージーランドの軍用ヘリ(写真:筆者撮影)

 もし今回の選挙で、結果に不満をもつ群衆がデモなどを起こせば、暴動に発展するのではないか、と心配する声も事前にはあった。そして暴動を口実に中国の警察や軍がソロモン諸島内で活動する可能性も心配された。このため、選挙の監視や治安維持のためのオーストラリアやニュージーランドの警察や軍の配備は例年以上に手厚いものがあったように思う。

 アウキでは、選挙前日から各国大使館員が選挙監視のためにやってきた。ニュージーランドから軍用ヘリがアウキ上空を飛び回り、ニュージーランド警官も配備されていた。

選挙期間中、治安に目をくばるニュージーランドの警官たち(写真:筆者撮影)

 実際は、選挙当日も翌日の開票開始後も平穏無事に推移し、ニュージーランド警官たちも「心配はしていないよ、念のためさ」と笑っていたが、現地で不動産賃貸や店舗経営をしている中国系住民は「マライタの人は、激情型で信用できない」と不安を漏らす声もあった。

 マライタで24年間、ビジネスをしてきた華人企業家のジョー・ドン氏はスイダニ氏が知事にカムバックすると聞いて少し不安げだった。「スイダニ知事になって(アウキ・コミュニケを出したことで)、マライタ経済はわるくなった。フィニ知事は親中派でほっとしたが、また親米派のスイダニ氏が知事に返り咲くのは心配だ」

アウキのマーケット(写真:筆者撮影)

 一方、アウキの地元マーケットの責任者は「食品や生活用品のほとんどすべてが輸入品で、その多くを中国系商店が仕切っている。私たちは自国で作った製品を自分たちの店で売りたい。ソロモン諸島人としてマライタ人としてプライドを持ちたい」という。

 ソガバレ政権と反体制派、親中と親米・親台湾の対立に加え、ガダルカナルとマライタという古くからの民族紛争と経済上の対立、貧富の差などが複雑にからむソロモン諸島の総選挙。最終的に投開票が整理されきっちりと結果が出そろい政権の行方が見極められるのは来週になるだろう。