親中派が庶民から嫌われる理由

 ソガバレ支持者はいわゆる富裕層、既得権益層だ。中国企業のソロモン諸島進出により利権を得る既得権益層の支持を強く受けている。選挙資金が潤沢にあるので、やはり選挙運動は強い。

 首都ホニアラで選挙キャンペーン最終日に見かけたキャンペーンカーが一番多いのはやはり与党のイエローカラーの車だ。だが、こうした金権選挙や、資金由来の分からない多くの不動産を所有するソガバレ氏については汚職の噂がたえず、庶民からの不人気は変えられない。

 一方で、中国の経済支配から脱し、米豪日本や台湾の支援を受けてソロモン諸島人による産業構造を再構築したいというのが反ソガバレ派の立場だ。その筆頭はスイダニ氏だ。

ソロモン諸島のマーケット(写真:筆者撮影)

 スイダニ氏は2019年10月、当時マライタ州知事の立場で「中国共産党と、その無神論的イデオロギーに基づく公的なシステムを拒否する」と訴えてマライタ州の自決権を謳う「アウキ・コミュニケ」を打ち出し、州議会で採択された。これは台湾から中国へスイッチしたソガバレ政権への抵抗であり、当時はマライタ州は独立国家を目指しているのではないか、とも言われた。

 アウキを案内してくれた観光業を営むサイラス氏は「アウキ・コミュニケに賛成だ。独立できるならしたい」「中国の支援はオーバーハンド(造ったものを与える)、我々が求めるのは協力だ。対等な関係がいい。ソロモン人によるオペレーションを後押ししてほしい。台湾の支援には農業のトレーニングなどもあったのだ」という。

 だが、2019年、ソガバレ政権による外交スイッチで、台湾人の支援はソロモン諸島から引き上げてしまった。