マネックスグループ 代表執行役会長の松本 大氏(撮影:宮崎 訓幸)

 2023年6月、マネックスグループの社長最高経営責任者(CEO)が、創業者の松本大氏から共同CEOであった清明祐子(せいめい・ゆうこ)氏へと交代した。東証プライム市場に上場する金融グループで女性がトップを務めるのは初めてのことだ。同社では、清明社長だけでなく、執行役員や管理職に女性の登用が目立っている。女性活躍を推進させるといいながらも、あいかわらず女性登用が進んでいない日本において、希有な企業ともいえるだろう。自身の後継者に清明氏を選び、代表執行役会長となった松本大氏に、女性登用を推進するために必要なことや、活躍できるリーダーに必要な資質について聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2023年8月30日)※内容は掲載当時のもの

ダイバースであればあるほどリターンは大きい

――マネックスグループの最高責任者に清明氏が就任され話題となっています。清明氏をトップに選ばれた理由を教えてください。

松本 大/マネックスグループ 代表執行役会長

1987年東京大学法学部を卒業後、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社(現シティグループ証券)に入社。1990年ゴールドマン・サックス証券に入社。1994年、史上最年少の30歳でゴールドマンサックス・パートナーに就任。1999年マネックスを設立し、オンライン証券サービスの草分けとして急成長を遂げる。東京証券取引所、マスターカードなど上場企業の社外取締役を歴任。

松本大氏(以下敬称略) なぜと聞かれても私にとっては当然のことで、何と答えたらいいのか。ただ言えるのは、清明が経営者に必要な資質を持っていたということでしょうか。

 経営者は優秀であることはもちろんですが、与えられた権限をちゃんと使い切ることができる力と、自ら方針を判断して決めきれる決断力が必要だと思っています。優秀さは、7のものを8にも9にも育てることができます。経営者に必要だといわれるリーダーシップも英語を話すのと同じで使わないと身につかない能力ですから、機会を与えて伸ばすことができます。しかし資質の部分は伸ばすというよりも、すでにその人に備わっているものだという気がします。清明の場合は、権限を使い切る力と決断力の両方を備えていましたから、後継経営者になり得ると判断しました。

――女性の経営者や管理職が少ないなかで、登用は当然のことと聞くと驚く企業のトップも少なくないのではないでしょうか。

松本 金融の世界では分散投資という常識があります。投資信託では何種類かの株を組み合わせていたりします。リスクを分散させて複数の性質のものを混ぜると、リスクを打ち消し合うのでリスクが下がります。リスクが下がれば、リスク・リターンの関係が良くなってきます。

 人材も同じだと思います。チームをつくる時にダイバースなメンバーで構成したほうが性能は上がります。誰かがやれと言っているとか、それが時代からの要請だとか、そういう話ではありません。勝つためです。自分の組織が勝つためにやったほうがいい、ただそれだけのことです。

 私は1999年にマネックス証券の前身にあたるマネックスを設立した際に設立趣意書みたいなものを作成して、仲間になってほしい人にプレゼンを行いました。そこに「理念の最高性」というページがあって、マネックスでは理念が一番重要で、理念を実現するために、優秀な人がいたら喜んで採用し、自分たちよりも上のポジションに置こう。誰かが社長をやらなければいけないから当面は私がやるけれども、一番偉いのは社長ではなく理念と書きました。

 理念を実現するために、より良い方法があればそちらを選択するだけです。人間は生き物なので、どんどん年齢を重ねていきますが、社会は人間ほど早く年齢を重ねないので、経営者という人間と社会との年齢差は開いていきます。マネックスを始めた時に私は35歳でしたが、今はもう社会の中心的な年齢よりも随分上になってしまった。清明は社会の年齢と近いので、私と交代することでマネックスに新陳代謝が起きます。この新陳代謝が成長を追求するためには必須であり、とても重要なことです。