「HIKAKIN」や「はじめしゃちょー」をはじめとした数々の人気YouTuber/クリエイターが所属し、東証グロース市場に上場するUUUM(ウーム)。そのUUUMの100%子会社であるP2C Studio社が「P2C(Person to Consumer)」と呼ばれる領域の新事業に取り組んでいる。事業発足の経緯から、新時代を見据えた事業展望について、P2C Studio代表取締役の重本隆之氏、ゼネラルマネジャー安部匡史氏、鈴木将之氏に聞いた。

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■UUUMグループのP2C Studio社が挑む、新しい事業モデル「P2C」とは何か(本稿)
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クリエイターの影響力を活用した新しいビジネスモデルの誕生

――P2C Studio社は2021年6月にUUUMの100%子会社として設立されました。まずは事業内容を教えてください。

重本 隆之/P2C Studio 代表取締役社長

国内系コンサルティング会社で経営コンサルタントとして4年間従事後、起業しEC事業やコンサル事業を展開。社会により大きな影響を与えられる仕事を志向し、大手インターネットサービス会社にてグループ横断でのマーケティング施策や新規サービスの事業責任者を経験。 総合PR会社にてD2C事業子会社および関連会社の2社を立ち上げから拡大までを役員としてけん引。2020年12月、P2C事業立ち上げの新規事業責任者としてUUUMに入社。P2C・グッズ・ライセンス・ECなどを展開するP2C Studioを2021年6月にUUUM子会社として設立。

重本隆之氏(以下敬称略) UUUMグループでは、2つの事業領域を主軸として成長をしてきました。1つは、YouTuberをはじめとしたクリエイターの動画配信などのサポートをしていくマネジメント領域です。そしてもう1つが、YouTuber/クリエイターの発信力をメディアとして捉え、サービスやモノの認知獲得や販売促進のためのタッチポイントとして企業に活用していただく、インフルエンサーマーケティング領域です。

 アメリカの大手IT企業のリストラや広告関連事業の決算での売上昨年対比減、広告市況の悪化によるYouTube広告費の減少、芸能人などYouTube配信者数の増加など、競争環境は変化し続けています。UUUM、クリエイターのどちらの視点でも更なる成長を実現するためにも新しいチャレンジが必要になっていきます。

 クリエイターは人気商売である反面、数年後も人気者でいられる保証があるわけではないため、動画など既存のマネタイズ手法とは違う道を作っておくのは彼らの人生設計においてとても大事なことです。例えば、UUUMと一緒にゲーム開発をする、音楽活動を行うなどさまざまな選択肢がありますが、P2C Studio社はP2C(Person to Consumer)という事業コンセプトを基に、ブランド・商品をクリエイターと協業して作る、という形でクリエイターのインフルエンス力を物販につなげる事業への注力をしております。

――改めて、P2Cとはどのようなものかお聞かせいただけますか。

重本 当社では「ヒトを起点としたブランド・モノづくり」と表現しています。MARINESS社と共同プロジェクトとして展開している宅トレブランド「MARINESS(マリネス)」のヒット商品として、1年間で45万個を販売したマリネスプロテインがあります。“UUUMが作った女性向けプロテイン”というより“(人気YouTuberの) 竹脇まりな監修の女性向けプロテイン”のほうが、彼女のフォロワーへリーチや高い共感性が期待できますし、商品開発の思いや商品ができ上がるまでのストーリーなど、ブランドとクリエイターの思いが更なる共感を得られます。また、インフルエンサーのフォロワー数としての影響範囲が大きくなり、そのファンが店頭やECモールで購入する売れ行きの初速により、人気商品としての訴求性が高まるため、クリエイターを知らない一般層も人気商品と認識をして買ってくれるようになっていきます。

 このように、クリエイターの発信力や発信力をつけるまでのプロセスや思いとリンクしたブランド・モノを、ファン層から一般層まで広げて売るのが、P2C Studio社の志向するP2Cビジネスです。多くのP2Cブランドは、インフルエンサーのオンライン上の発信力を活用して、自分のファンに向けて自分のアカウントを主に情報発信を行い、オンラインでの販売に留まることが多いですが、われわれはさらに踏み込んで、(リアルな店舗を持つ)大規模流通さんを介してスピード感を持って事業拡大をする、というビジネスモデルを目指しています。

ドン・キホーテ店内に作られた竹脇まりな(右)プロデュースの「MARINESS Protein(マリネス プロテイン)」の特設コーナー
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 例えば、ECだけだと数千個程度しか売れないものが、流通さんに入ってもらうことによって何千店舗で販売できるようになる。そうすると数万個というロットを作れるようになり、原価が抑えられ、より手に取りやすい価格で販売をすることができます。原価・価格面とクリエイターのファンに向けた発信力にプラスして、小売店の面を取りにいくことによってタッチポイントが増えていくことで、そのクリエイターのファン以外の人たちにも商品を届けることができる販売力を向上させていきます。当社は、そういった形でP2Cを施行しているのが特徴です。

「ヒト」を起点としてブランド・商品企画を行い、P2C Studio社が積極的な在庫/販促投資、店舗展開をすることで大規模な事業展開を早期に実現している。
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