コンテンツが持つ爆発力や高視聴率の可能性

 フジテレビは社内で協議し、放送権契約の条件や権利金について交渉を重ねて、国際スケート連盟主催の主要大会の放送権を得ることとなった。

 一度は成功しなかったフィギュアスケートに再びチャレンジした背景には、当時のスポーツへの関心の高さにあったと言う。

「2003年は9月に大阪で開催された柔道の世界選手権、続いて11月に約1か月間に渡って独占放送をしたバレーボール・ワールドカップ、これらのスポーツ中継をフジテレビで手がけましたが、高い視聴率を獲ることが出来ました」

 バレーボールの女子は「メグカナ」の愛称で知られた栗原恵と大山加奈を中心に人気を集め、柔道では谷亮子(世界選手権時は田村亮子)らが活躍していた頃だ。

「立て続けに放送したスポーツ中継が高視聴率を獲り、フジテレビの視聴率競争に大きく貢献することが出来ました。スポーツコンテンツが持つ爆発力や高視聴率の可能性を再認識し、社内でのスポーツに対する期待の高まりを実感することができました。そこで野球やサッカーのオフシーズンに挑戦してみようという雰囲気が社内に起こりました。上司から『今度フィギュアを始めるけどやれるか?』って聞かれて、『ぜひチャレンジさせてください』と手を挙げてプロデューサーになりました」

 そこからフィギュアスケートをあらためて学び、調べてみると、そこにある大きな可能性を見出した。

「荒川静香さんや村主章枝さんが先頭に立ち、続いて安藤美姫さんという若い選手が4回転ジャンプを始めて成功したこと、さらには、まだ小学校を卒業したばかりの、浅田真央さんという将来を期待される選手がいることも知りました」

 最初の放送は2004年3月、ドイツ・ドルトムントでの世界選手権だった。

 それは不安の中でのスタートでもあった。(つづく)