青春時代に憧れつつも、どうしても手が届かなかったアノ名品だって、いまなら手が届く…いや、むしろいまだからこそ手を伸ばす価値がある! 自分と等しく年月を重ね、“次代のヴィンテージ”と目されるに至った、ファッション界の人類遺産たちに、いま改めてスポットを当てる。
写真=丸益功紀[BOIL] スタイリング=コダン 文=黒澤正人 編集=名知正登
ワールドワイドな人気を受けてファッション界からも熱視線!
日本最大の輸出産業は何か。自動車? 半導体? いやいやアニメーションでしょ! そう。もはやアニメは日本を代表するカルチャーにして、世界に冠たる産業のひとつ。政府が打ち出すクールジャパン戦略においても、核となる存在と目されている。
そもそも日本のアニメが世界でブレイクしたのは、1990年代以降のことだそう。それ以前にも『鉄腕アトム』を筆頭に数々の名作が誕生してはいたものの、どれも海外で熱狂的ブームを巻き起こすまでには至らなかったが、1988年に鬼才・大友克洋監督の『AKIRA』によって潮目が一変。“ハッピーで楽しい子供向け”というジャンルにカテゴライズされていたアニメが、“リアルで大人も楽しめる文学”としても認められるようになったのだとか。
以降の飛躍は承知の通り。まだ“一部の層の間で”という枕詞を完全解除するには至っていないものの、現在日本産アニメは世界中に熱烈な信者を獲得。「フランスでは総理大臣より鳥山 明先生の方が有名らしい」なんて都市伝説も飛び交うまでになったし(苦笑)、スタジオジブリ作品がかのアカデミー賞の長編アニメーション映画賞を2度も受賞するなど、“世界をリードする存在”という権威を誇るまでにシーンは醸成された。
ところが意外だったのは、この勢いがファッションの分野にも飛び火したことだ。以前まで色物扱いだった「アニメT」が、最近ではヴィンテージブームの追い風に乗ってか、すっかり“お洒落なもの”認定されているのだ。Tシャツにおいては、これまでフォトTやバンドTなんかがヴィンテージのカテゴリーに列挙される常連だったが、今やそれに比肩するほど需要は拡大。日本産アニメの人気が世界中で加速していることからみても、この流れは今後ますます強化されていくはず。今のうちにアンテナを張っておかないと、いずれジャパニメーションTシャツは手の届かない存在になるかもしれない。