現地では失われつつある伝統的な料理
ところで、なぜ岡田さんはラオス料理店を開くことになったのだろうか。店主の岡田さんと妻の綾さんは、ラオスで10年以上暮らした経験を持つ。大学時代に焼畑農業の研究のためにラオスを訪れた岡田さんは、自然と寄り添うラオスの暮らに感銘を受け、「ここに住みたい」と心に決めたのだとか。
研究を終えていったんは日本に戻り、料理の勉強をしながら資金をためた。そして改めて2004年に綾さんと二人でラオスに移住し、翌年向こうで和食をベースにした創作料理店を開店したのだ。それから10年後にラオスを離れ、2015年に地元京都でラオス料理の店を開いた。
戻ってきたのは、近代化が進む今のラオスに違和感を感じたからだった。10年の間に岡田さんが憧れたかつての伝統は薄れ、新しい価値観が生まれていった。けっして悪いことではないが、気持ちを切り替えて、今度はラオスを外から見守ることで、自分にできることもあるかもしれないと考えなおしたという。
今、店で出す料理は伝統的なラオス料理であり、かつて岡田さんが憧れたラオスそのもの。今や現地では失われつつある料理がここ京都に残っていく。それはいつの日か貴重な文化になっていくのかもしれない。