いざ試乗! しかもアウトバーンあり

 今回、試乗できたのはエメヤSとエメヤRの2モデル。どちらもプラットフォームの多くをエレトレと共有しているほか、前後に計2基のモーターを搭載するパワートレインも基本的に共通で、その最高出力はエメヤSが603ps、エメヤRが905psと発表されている。このため発進してから100㎞/hに達するまでの加速タイムはエメヤSが4.2秒、エメヤRは2.8秒と強烈。一般的にEVが苦手としている最高速も前者が250km/h、後者が256km/hとかなりの高性能を誇る。

 まあ、こういう性能データは一般的にいって単なる数字に過ぎないことが多いけれど、今回はドイツのアウトバーンで実際に最高速度を試すことができた。ご存知のとおり、アウトバーンにはいまでも速度無制限区間が残されているので、ここであれば合法的に最高速度を試すことができるのだ。

写真はロータス エメヤ S

 まずはエメヤSで最高速にチャレンジする。130km/h前後の巡航速度から170km/hくらいまで加速するのは文字どおりあっという間。しかも、その加速感が200km/hに達しても、230km/hに達しても衰えることなく、ほとんどそのままの勢いで250km/hに到達したのには驚いた。この超高速域でも加速感が衰えないのは、モーターがパワフルであること以上に、優れたエアロダイナミクスの恩恵であることは間違いない。続いてエメヤRでも最高速度トライアルに挑んだが、エメヤSより300ps以上もパワフルなこともあって、軽い恐怖感を伴うくらいの勢いで250km/hオーバーに到達したのにはさらに驚いた。

 でも、エメヤの本当の魅力は、そんな非日常的な速さだけにあるわけではない。

 たとえば市街地をゆっくりと走っているとき、しなやかな足回りと屈強なボディが路面からのショックを滑らかに受け止め、快適な乗り心地をもたらしてくれる。そしてステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダルは、いついかなるときでもドライバーの操作をしっかりと受け止め、それをクルマの動きとして正確に反映させる。だから、市街地だろうとワインディングロードだろうと、いつでも緻密にクルマをコントロールできる。その精度の高さ、そしてドライビングの歓びは、これまでのロータスと深い部分でつながっているように思えるほどだった。

写真はロータス エメヤ R
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 その理由を、商品戦略担当常務取締役のデイヴ・ギルバートに尋ねると、こんな話を聞かせてくれた。

「現在のロータスは中国、ドイツ、イギリスの3ヶ国に開発拠点がありますが、このうち、もともとロータスの本拠地があったイギリスのヘセルでは、 “ここ”を使ってクルマの評価をしています」

 そういってギルバートが「ポンポン」と手で叩いてみせたのは、自分の腰のあたりだった。

 クルマの乗り心地やハンドリングは、すべて腰で感じられるものというのがクルマ好きの間で古くから信じられてきた。ギルバートが私にジェスチャーで示したのは、「クルマの総仕上げは、いまも昔も変わらず、ヘセルの職人たちが行っている」ということだったのだ。私がエメヤとロータスの伝統を結びつけて考えたのは、これが最大の要因だったに違いない。

 このエピソードを耳にしたとき、私の心を覆っていたモヤモヤがようやく晴れたような気がした。

ロータス「エメヤ」の試乗リポートは大谷達也氏のYouTubeチャンネルThe Luxe Car TVでも公開中!