幻の名画《アマリリス》公開

「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」展示風景

 東京都庭園美術館にて開幕した「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」。夢二式美人画を鑑賞するのに、これ以上相応しい会場はない。東京都庭園美術館は旧皇族・朝香宮家の邸宅として1933(昭和8)年に完成。装飾性豊かなアール・デコ様式の建物は、時代感も雰囲気も夢二作品とよくマッチしている。実際、朝香宮家が居住していた当時は、邸宅内に夢二の色紙が飾られていたという。

 本展では夢二の故郷・岡山にある夢二郷土美術館のコレクションを中心に、作品や資料など約180点を展示。その中には、長らく行方不明だった幻の名画《アマリリス》や今回初公開となる「晩年のスケッチブック」など、貴重な作品も含まれている。

 1919(大正8)年に描かれた《アマリリス》は、約30点しか現存していない夢二の油彩画のひとつ。同年に福島県で開催された展覧会に出品され、その後、東京・本郷の菊富士ホテルの応接間に飾られたが、1944(昭和19)年のホテル廃業とともに所在不明になってしまった。だが、昨年都内にあるという情報が寄せられ、調査の末、真作と判明。現在は夢二郷土美術館の収蔵品になっている。モデルの女性は、佐々木カネヨ(お葉)。手前にアマリリスの鉢植えを置いた大胆な構図が印象的だ。ちなみに、赤いアマリリスの花言葉は“輝くほどの美しさ”である。