取材・文=岡本ジュン 撮影=村川荘兵衛

『淡海地鶏のスモーク』(1人前)。鶏の正肉のほかに白子など様々な内臓が入っている

セルフで生ハムカットが楽しめる、気さくな雰囲気がクセになる

 「どうしてだかオジサンに好かれちゃうんです」。

 イタリアン「京都ネーゼ」のオーナーシェフ森さんは、そういって茶目っ気たっぷりに笑った。

 京都三条木屋町すぐの場所にオープンして今年で18年。この店は文化人・著名人が多く通う、京都人いきつけのベテランイタリアンだ。

 ビルの3階という立地もいいのかもしれない。観光客であふれかえる高瀬川に面していながら、通りすがりの人々の目からうまく隠されている。調理技術も食材もきちんとしているが、コースではなく単品できままに飲んで食べられるのも最大の魅力。客層は食通の大人が大半で、おいしいものをゆったり楽しんでいるのがわかる。

シェフの森博史さんは調理の合間にカウンターで軽快なトークを繰り広げる

 メニューは、あってなきがごとし。

「お客さんに頼まれたらなんでもやっちゃいます」と気持ち良いほどきっぱりと言い放つ。

 たとえ端正なパスタであっても「生ハムも一緒に食べたい」とか、「目玉焼きのっけて」とか、自分好みのカスタマイズは大歓迎という。そういえば、京都在住の常連に連れられてラストオーダー間際に飛び込み、裏メニューの『ナポリタン』を食べたこともあったっけ。

店の中央に据えられたスライサー。誰が切っても上手に切れるように調整されている

 トッピングで人気の生ハムはホール中央のスライサーで、ゲストがセルフで切るスタイル。それはまたどうして? と聞くと

「自分で切ると楽しいでしょう」という。

 確かに! 生ハムなんて自分で切ったことがないもの。単純明快にさっぱりと明るい雰囲気がなんともいえない。それが心地よくてついつい通ってしまう常連が後を絶たないのもわかる。