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DB12をベースとした最新ヴァンテージ

 もともとヴァンテージは、1950年にDB2のエンジンをチューニングするキットの名前として用いられたのが最初だが、2005年に誕生したモデルからは、DBシリーズをベースとしながらも独立したスポーツカーとの位置付けに変わっていった。それゆえに、座席レイアウトはDBシリーズの2+2(おとなふたりとこどもふたりが乗れる程度の室内スペースを持つ車のことを指す)に対して、ヴァンテージは2シーターと割り切り、その軽快さといくぶんの割安感を生かしたスポーツカーとのポジションが与えられてきた。

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 そこから数えて3代目にあたる新型は、これまでと同じように、最新のDBシリーズであるDB12と技術的に多くの部分を共有しながら、よりコンパクトで力強い走りのモデルとして開発されることになった。

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 具体的には、まずエンジンのパワーアップを実現。最高出力は従来型の510psから665psへ、最大トルクは685Nmから800Nmと長足の進歩を果たした。なお、DB12や新型ヴァンテージに搭載されているのはメルセデスAMG製の4.0リッターV8ツインターボ・エンジンがベースだが、これをアストンマーティンの社内チームが徹底的に見直し、改良を施すことで、上記のパフォーマンスを手に入れている。

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エンジンフードにはエンジンを担当したアストンマーティンのエンジニアの名前が入っている

 サスペンション系では、DB12にも採用されたビルシュタイン製DTXアダプティブダンパーを装着。減衰力の幅広い可変幅を活用することで、ボディをよりフラットに保ち、コーナリング時のボディの傾き(これをロールと呼ぶ)を抑えるセッティングが可能になったという。

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 さらには、こちらもDB12と同じようにボディの各部を徹底的に強化。とりわけリア周りは、ストラットタワーバーと呼ばれる補強材を追加するなどして、大幅な剛性向上を果たしたようだ。

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 そうしたボディ剛性の強化は、公道を走っただけでもはっきりと体感できる。サスペンションの実質的なスプリングレートは従来型よりもむしろ高められているはずなのに、荒れた路面の一般道を走っていても不快な微振動などはすべてボディが抑え込んでくれるので、実に質感が高い乗り心地に感じられる。また、こちらも高いボディ剛性のおかげだろうが、タイヤが路面と接地している様子が明確に伝わってきて、コーナリング時の安心感が格段に高まっていた。これは、とりわけサーキット走行で役に立つ特性なので、公道走行の後に用意されているモンテブランコ・サーキットでのテスト走行が楽しみで仕方なかった。