大谷 達也:自動車ライター
アストンマーティンとDB
スペイン・セヴィリア地方で行われたアストンマーティンの新型ヴァンテージ国際試乗会に参加してきた。
そう言われても、多くの方にはなんのことだか理解できないだろうから、少しだけアストンマーティンのバックグラウンドをご紹介しよう。
アストンマーティンは1913年にイギリスで誕生した、極めて長い歴史を有するラグジュアリー・ハイパフォーマンス・ブランドである。ただし、生産規模が小さなこの手の自動車メーカーにはよくある話だが、これまで何度も倒産の危機にさらされ、そのたびに新しいオーナーが登場して危機を救うということが繰り返されてきた。
そんなアストンマーティンの名を最初に世界に知らしめたのは、1963年に誕生したDB5だとされる。その最大の理由は、世界中で公開されてヒット作となった映画007シリーズのゴールドフィンガーとサンダーボルド作戦にボンドカーとして登場し、世界中でプロモーションを行ったことにある。
ちなみに、モデル名のDBは、当時アストンマーティンのオーナーだったデイヴィド・ブラウンの頭文字に由来する。そしてDBシリーズは、これ以降もアストンマーティンの主力モデルとして好評を博することになる。
DBシリーズの特徴は、強力なエンジンを搭載しているので速いことは速いものの、サーキットをがむしゃらに走るピュアスポーツカーとはやや趣が異なり、長距離を快適に走るグランドツアラーとして開発された点にある。その意味でいえば同郷のベントレーと近いけれど、「ラグジュアリーでスポーティなグランドツアラー」という点でいえば、出身はイタリアになるもののマセラティと極めて近い関係にある。差し詰め、DBシリーズの最大のライバルは、マセラティのグランドツーリズモといってもいいくらいだ。
このDBシリーズはいまもアストンマーティンの主力モデルとして君臨しているが、彼らにはもう1台、主力モデルがある。それが、ここでご紹介するヴァンテージである。