【さらにおすすめの5冊】

文学で巡るアジアの旅、若手作家9人によるアンソロジー

『絶縁』
著者:村田沙耶香、アルフィアン・サアット、ハオ・ジンファン、ウィワット・ルートウィワットウォンサー、韓麗珠、ラシャムジャ、グエン・ゴック・トゥ、連明偉、チョン・セラン
訳者:藤井光、大久保洋子、福冨渉、及川茜、星泉、野平宗弘、吉川凪 
出版社:小学館
発売日:2022年12月16日
価格:2,200円(税込)

【概要】

 韓中日+東南アジアの若手世代の作家9人によるアンソロジー。多くの作品が既存作品の翻訳ではなく書きおろしという前代未聞のプロジェクト。日韓同時刊行。突如若者に舞い降りた「無」ブーム。世界各地に「無街」が建設され――(村田沙耶香「無」)。夫がさりげなく口にした同級生の名前、妻は何かを感じとった(アルフィアン・サアット「妻」/藤井光・訳)。ポジティブシティでは、人間の感情とともに建物が色を変える(ハオ・ジンファン「ポジティブレンガ」/大久保洋子・訳)ほか。

【おすすめポイント】

 文学にも地政学があった!? 日本、韓国、香港、ベトナム、シンガポールなど、文化的背景の差異に魅せられるアジア文学のコスモス。

 

オカルト、宗教、デマ、フェイクニュース、SNS。あなたは何を信じていますか?

『方舟を燃やす』
著者:角田光代
出版社:新潮社
発売日:2024年2月29日
価格:1,980円(税込)

【概要】

 口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行し、今も戦争が起き続けている。何でもいいから何かを信じないと、今日をやり過ごすことが出来ないよ――。飛馬と不三子、縁もゆかりもなかった二人の昭和平成コロナ禍を描き、「信じる」ことの意味を問いかける傑作長篇。

【おすすめポイント】

 下部構造は上部構造を規定する? 昭和の“特異点”である専業主婦世代とバブル世代の男女を描き、戦争後遺症にまで降りる戦後通史のパノラマ。

 

結婚とは? 家族のかたちとは? 未来のあり方を考える

『結婚の社会学』
著者:阪井裕一郎 
出版社:筑摩書房(ちくま新書)
発売日:2024年4月8日
価格:1,100円

【概要】

「ふつうの結婚」なんてない。結婚の歴史を近代から振り返り、事実婚、パートナーシップなど、従来のモデルではとらえきれない家族のかたちを概観する。

【おすすめポイント】

 夫婦同一姓や異性婚など、明治を起点にしたエセ伝統主義者たちよ、もういい加減観念して、未来に目を向けましょうよ。

 

小型の判型、美しい装丁が嬉しい、大人の童話

『それでも世界は回っている 3』
著者:吉田篤弘
出版社:徳間書店
発売日:2024年2月28日
価格:1,925円

【概要】

 18刷、累計5万5千部突破、著者・吉田篤弘のロングセラー『月とコーヒー』から派生した〈インク三部作〉完結編。幻のインクを求めて旅をする十四歳の少年の奇妙な冒険は、謎が謎を呼ぶ仕掛けの全15話。それぞれの完成度の高さもさることながら、今回も夜の幻想に甘く酔う。

【おすすめポイント】

 夜の静けさと月明かりの優しさがハーモニーを奏でる吉田篤弘のファンタジー世界。手の平に乗る小型の造本も愛おしい。

 

大宅壮一ノンフィクション賞受賞作、待望の文庫化

『女帝 小池百合子』
著者:石井妙子
出版社:文藝春秋(文春文庫)
発売日:2023年11月8日
価格:1,100円(税込)

【概要】

 キャスターから国会議員へ転身、大臣、さらには都知事へと、権力の階段を駆け上ってきた小池百合子。しかしその半生には、数多くの謎が存在する。「芦屋令嬢」時代、父親との複雑な関係、カイロ留学時代の重大疑惑――彼女は一体、何者なのか? 徹底した取材に基づき、権力とメディアの恐るべき共犯関係を暴いた、衝撃のノンフィクション!

 私は小池百合子という個人を恐ろしいとは思わない。だが、彼女に権力の階段を上らせた、日本社会の脆弱さを、陥穽を、心から恐ろしく思う。(「文庫版のためのあとがき」より)

【おすすめポイント】

 石井妙子さんの端正な文章にもご注目を。東野圭吾の出世作(私は名作だと思ってますが)『白夜行』のヒロインが、ノンフィクションの世界に本当にいたんだという驚きも。

 

※「概要」は出版社公式サイトを基に作成。