街の象徴スタリ・モスト

 モスタルは古いトルコ風の家々や、幅30m、高さ24mという当時としては驚くべき建設技術で建てられた「古橋(スタリ・モスト)」(現在の橋は再建)が有名です。

 オスマン帝国に支配されていた時代、街の中心には木製の吊り橋が架かっていましたが、1566年、地元の石灰岩を使ったトルコ式アーチ型の石橋として架け替えられました。街の名前になっているモスタルは、橋の番人を意味する「モスタリ」に由来しています。

 スタリ・モストは紛争中の1993年11月9日午前3時、クロアチア系のカトリック民兵から放たれたロケット弾が側壁に命中し、破壊されてしまいます。ネレトヴァ川を挟んでムスリム地域とキリスト教徒地域に分かれていて、橋はムスリムが作ったということでカトリック民兵の標的になってしまったそうです。

 その後復興計画が持ち上がり、川底から破壊された橋の残材を集め、足りない石材は創建当時と同じように地元の石灰岩を使い、ユネスコの支援を受けたトルコ企業が創建当時の技法によって復興工事を行いました。

 2004年6月23日、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の悲しみの象徴であったスタリ・モストは、再び街の象徴として蘇ります。橋を真下から見上げると大迫力で、このような高い橋を16世紀によく造ったものだと驚きます。

 エメラルドグリーンのネレトヴァ川に架かる再建された橋とモスタル旧市街は、多民族・多文化の共生や和解の象徴ともなっています。橋のたもとには「忘れるな」という英語のメッセージを刻んだ石が置かれています。

スタリ・モストから飛び込もうとしている若者 写真=フォトライブラリー

 地元の若者たちの間ではスタリ・モストから川に飛び込むのが伝統になっていて、毎年夏に飛び込み大会が開催されています。

露店やレストランで賑わう石畳の道 写真=フォトライブラリー

 橋の近くは美しく整備され、石畳の道が続く歩行者天国になっています。ショップや露店、レストラン、土産物店などが連なり、多くの観光客で賑わいます。川沿いのオープンカフェから橋を眺めるのもおすすめです。

ネレトヴァ川沿いのカフェ 写真=フォトライブラリー

 また、スタリ・モストの北東側にひときわ目立つミナレット(塔)のあるモスクが、「コスキ・メフメット・パシナ」。約30メートルの高さのミナレットは階段で上がることができ、ここからスタリ・モストと旧市街の絶景を眺めることができます。有料トイレと売店があるので、ここでも休憩することができます。

コスキ・メフメット・パシナ バーナード・ギャニオン, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons