「練習を100%楽しむことができなくて」
翌月の全日本選手権ではNHK杯以上に内容を向上させて5位となる。
「練習で1回1回ジャンプの精度がどんどん上がってきていて、それを本番で出し切ることがNHK杯以上に達成できたことの1つだと思います」
「NHK杯のときの状態から全日本の今の状態を自分でも想像はしてなくて。最後まで演じ切ることができて、また1つ成長できたのかなと思うので、次の試合をもしもらえたら、そこに向けてまた全力で頑張りたいと思ってます」
演技を終えて、笑顔が弾けた。
その時間を、三原は振り返ってこう語る。
「全日本が終わった直後はちょっとアドレナリンとか出ているのもあって、痛みをあまり感じてなかったところもあったと思います」
高揚もあっただろう、ただ、試合後の言葉や表情には、試合を1つ重ねて、上昇できたという手ごたえがうかがえた。はっきりと前を見据えているようだった。
全日本選手権終了後、各大会の代表選考会議が行われ、三原は四大陸選手権への派遣が決まった。
ターゲットは定まったはずだった。でも——。
「帰って全日本の振り返りやチェックをして、『ここからまた上げていくぞ』という思いが強かったんですけど、日々の練習をしていく中で目指す演技と自分の体の状態にちょっとずれがあったところもあって。目標として、全日本以上のショート、フリーをすると強い思いで決めていたのに練習で痛くなってきてしまったり、プログラムで自分の思うようにジャンプが入らなかったりというのがちょっとずつ続いていきました」
その時間を「練習を100%楽しむことができなくて」と表現する。練習に真摯に打ち込み、練習そのものを大切にするからこそ、納得のいくところまで練習に打ち込めないのが苦しかった。
「やっぱり昨シーズンのような、いい演技ができて結果もついてくるシーズンにするためには練習が必要というのは私もすごく分かっていたので。(中野)先生は『できないんだったらやめたらいい』という感じの言葉で私を励ましてくださいました。いつもだったら『頑張らないとあかん』と切り替えられるんですけど、そのときはマイナスに受け取ってしまって…」
葛藤はふくらんだ。描いていた青写真とのギャップに苛まれた。
「全日本のあと、四大陸選手権の前までは『もう続けられないのかな』って思ってしまった時期もありました」
でも、そのまま沈んではいなかった。
三原は気持ちを立て直していった。
その原動力は何だったのか——。(後編へ続く)