2024年2月28日(水)から3月4日(月)まで、伊勢丹新宿展 本館6階 催物場にて、三浦大地の大規模アート個展『DAICHI MIURA DIALETHEISM』が開催されている。その開催初日、JBpress autographは三浦大地さんにお話をうかがった。
この展覧会のテーマ「真矛盾主義」について
『DAICHI MIURA DIALETHEISM』の会場にて、作品を前に三浦大地さんと話をしていてフランスの小説家、アルベール・カミュの作品『シーシュポスの神話』のエピソードが頭を離れなかった。
ギリシャ神話の登場人物、シーシュポスは、神々から罰として、大岩を山の頂に運ぶ仕事をさせられる。ところがその山の頂は尖っていて、苦労して岩を運んでも、すぐにごろごろと転がり落ちてしまう。シーシュポスは、それでまた同じ仕事を1からやり直す。カミュは人生もこんな感じだ、と言いたいとおもわれるのだけれど、三浦大地さんは、今回「ピラミッド」のモチーフを繰り返し使っていて、そこに球体を組み合わせるのだ。
「今回のモチーフには三角と丸が多いんです。社会構造はピラミッド構造とか言われるじゃないですか? 資本主義とか、階級社会とか、そういうのは今って、NGな考えっていうか、あんまりポジティブなとらえられ方をしないですよね? だから、ピラミッドはスピリチュアルなものとして崇められていることが多いですけれど、でもピラミッドって精神性ないじゃんっておもったんですよ。それで、その上に丸が乗っかる。和の世界がある。バランスが悪過ぎて、すごくきわどい構造だとおもうんですけれど、それが存在する、存在できるのが真矛盾主義かとおもいます」
「真矛盾主義」という、インテリジェントな香りがするワードは、この展覧会のタイトル「DIALETHEISM」の日本語訳だ。会場に書いてある「This sentence is a lie(この文章はウソである)」というのは真矛盾主義の説明でよく使われる例文で、この文章がウソの場合も、ウソじゃない場合も、おかしなことになる。そういうのを真矛盾主義という。
そこから、話は一旦、ホラー映画に行く。『シャイニング』をモチーフにした一角が会場内にあって──
「ホラー映画って好きな人、多いですけど、なぜ見るのか? だって、ホラー映画の登場人物みたいな恐い目になんて会いたくないですよね? でも、それって、 恐怖を感じることで、生きていると感じるからじゃないか、とおもって。じゃあ、恐怖がないと生を感じられないなら、戦争が起きているのもそうじゃないか? だって、 戦う、争う、殺す、それは愛の延長で、お金でも、家族でも、権力でも、守りたいものがある、愛するものを守りたいから戦う。じゃあ、それは1セットで、争いがなければ愛は感じられないかもしれない。そこには否定も肯定もない」
という問いを挟んで、もう一度ピラミッドへ
「ピラミッドがなんでスピリチュアルなのか確かめにエジプトにも行ったんですけれど、街は荒れていて、なんでだろう?っておもったんです。それで、ピラミッドには逆のピラミッドがあるんだって。それは精神的なものだから、目に見えないけれど逆の三角が存在している。目に見ている形じゃないものがあるって知ったんです」
三浦さんの今回の展覧会のテーマは、大きく言うと、このあたりにある。
この展覧会は、そういう問いが連続していく。文化とは?多様性とは? 男女とは? 新旧とは? 真贋とは? 生死とは? 高尚と卑属とは? 法律とは? それらには常に、ひとつの解答とそれと矛盾する解答が1セットで提示されている。
そしてこの話に結論はない。カミュにもないですしね。三浦大地にもないんです。ただ、やや結論めいた説明は、もうちょっとだけある。
「この部屋は宇宙規模の視野、ミクロとマクロの世界です」
「宇宙って、自分の体のなかにもあるし、どこからが内でどこからが外なのか、どこから宇宙なのかって、人間が決めているだけ。宇宙の真理がわかっちゃった、と言っても、そんなのないんですよ。それってどうでもよくて、それを知ったところで、その体で真理に触れられるんですか?っていったら、そういうわけではない。そうなると、どうでもいい。じゃあ、宇宙の真理を知っている自分が、なにができるかといえば、近くにいる人を楽しませるとか、美味しいご飯を食べるとか、そういうことでしかないから。だから、僕は義理人情がすごく好きなんです」