「育てたい、成長させたい」
スケートクラブを立ち上げたとき、「できるかできないかよりも、やるかやらないかだと思っています」と言った。あれからまもなく2年。
「後悔は全くないですね。やってよかったなと思っています」
根底には、フィギュアスケートへの変わることのない愛着がある。
「フィギュアスケートは面白いです。自分を表現できるじゃないですか。自分をこういう風に出したい、見てもらいたいと自分を出せる。人の真似をしないで自分を出せる。スポーツでもあるからアスリートとしての強さみたいなものも鍛えるし、プラスして自分を出せるってフィギュアスケートのいいところですよね」
指導にあたって大切にしているのは「洞察力」だと言う。
「今何か悩んでいるのかな、お母さんの体調が悪いんかな、だからこうなんだねとか、しっかりその子を見ること。子どもって絶対に合図を出しているんですね。何かおかしいと思って、後から聞くと学校の先生に怒られていたんだと知ったりすることがあります。なんか、最近よくお腹に手をやるよねとか、最近よく頭かくよねとか、毎日見ていると分かるんですよね。やる気がないんでしょ、とか決めつけるのはよくないですね。もちろん、ただ単にたるんでいるときもあるんですけど(笑)。
しっかり見て合図に気づくことが大事なのは、怪我を防止する意味もあります。本人も痛みをあまり感じていなかったりすると、ちょっとぐらいのことなら我慢したりするじゃないですか。それが積もり積もって怪我につながったりしますから、何かおかしいんじゃないかというのに気づけるかどうか大切ですね。息子(樋口将太)がトレーナーなんですけれど、体のこととかはよくみてくれるので、そこは助かっていますし、1人で全部をみることはできないので、親御さんにも助けてもらいつつ、というところです」
最後に樋口は言った。
「やるだけやってみます」
フィギュアスケートへの愛着に加え、もう1つ変わることのないのは「育てたい、成長させたい」という思いだ。教える子たちを花開かせるために、変わることなく進んでいく。
樋口美穂子(ひぐちみほこ) 山田満知子コーチのもとでフィギュアスケーターとして活躍し1981年の全日本ジュニア選手権2位、全日本選手権出場などの成績を残す。二十歳で引退し、山田のもとでコーチとなる。2022年世界選手権で優勝しオリンピックでも2大会連続メダルを獲得した宇野昌磨をはじめ数々の選手を育てた。2022年3月、「LYSフィギュアスケートクラブ」を創設、指導にあたっている。振り付けも数多く手がけている。