すごいぞ!BMW X1のADAS

 X1は最もコンパクトなBMWのSUVで、2023年にフルモデルチェンジしました。バッテリーとモーターで走るEVの「iX1」と、ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車の「X1」とパワートレインは3種類用意されています。

 内外装のデザインも大きく改められました。特に大きく変わったのが、ハンドルの左右スポークです。右側には音楽再生、電話、音声操作、その他の設定スイッチなどが配されています。左側は運転支援機能の操作ボタンとノブなどが並んでいます。これまで存在していたキャンセルやレジュームのボタンがありません。車間距離の設定も最高速度設定ノブと兼用しているのですっきりしています。

 運転支援機能は高速道路もしくは自動車専用道のためのものなので、首都高速の11号線と湾岸線を往復して試してみました。

 走り出して、まず最初にハンドル左側スポークの左にある、1/0と表示された起動ボタンを押します。これでONになります。

 前方のクルマを把握し、左右の白い車線も見えているとクルマが判断すると、ACCとLKAが作動します。まだ多くのクルマでは、このタイミングで“SET”などのボタンを押すひと手間が必要になります。718ボクスターでは、ステアリングポストから生えている左下側のレバーを奥に押し込みます。

 X1のADASが作動していることはメーターパネル左側の速度計の中心よりやや下側に、クルマとメーター、ハンドルの二つのアイコンが緑色に表示されることでドライバーに伝えられます。

 さらに、X1は渋滞時にハンドルから手を離すことができます。その機能をBMWでは、「ASSIST PLUS」と呼んでいます。

 ASSIST PLUSを実現するには、時速60km以下で走行していて、前方のクルマを把握しており、その他の条件も勘案してクルマが「いま渋滞の中を走っている」と認識する必要があります。

 それらが揃うと、二つの緑色アイコンの下に白いアルファベットで「ASSIST PLUS READY」と表示されます。ASSIST PLUSのスタンバイ状態に入ったわけです。

 ここからが今までのクルマと大きく違うところなのですが、何かのボタンを押したり、スイッチを入れたりするのではありません。なんと、握っていたハンドルを離すのです。

 ASSIST PLUSがONになったということをドライバーがメーターパネル上の表示を見て知って、パネルをタッチするなりボタンを押すなりしてドライバーが何かを操作して手を離すのではありません。そもそもASSIST PLUSが実効すること=ハンドルから手を離せるわけですから、ひとつの状態とひとつの操作をシームレスにつなげたのです。

 そして、ASSIST PLUSが実効していることは、ハンドルの左右スポークの上方にある横長のインジケーターが緑色に点灯することで表現されます。緑色に点灯している間は、渋滞中でACCとLKAを効かせて走っているのでハンドルから手を離しても構わなくなります。

 渋滞が解消したり、ACCやLKAなどが効かなくなる状況に陥ると、インジケーターは赤に点灯しますので、ドライバーは再びハンドルを握らなければなりません。

 また、手放しは良くてもヨソ見はダメです。メーターパネル上方の中央にある“ドライバー監視カメラ”が逃さずにずっと見ているのです。メーターパネル右下方に「わき見検知。引き続き注意。」というお達しがすぐさま表示されます。視線を前方に向け直せば消えます。

人間とクルマの関係のアップデイトだ!

 文章で表すと回りくどくなってしまうかもしれませんが、X1の運転支援機能はとても使いやすく進化しています。これは運転支援機能を革新し、より身近な存在にするものです。ドライバーの負担は確実に減っています。少し大袈裟に言うならば、人間とクルマの関係性をアップデイトするもので、X1で最も重要な本質がここにあります。

 これならば、「何度教わっても使い方が憶えられないので、使わない」とか「メリットがわからないので、使わない」という理由から運転支援機能を使わない人はいなくなるでしょう。

 一昨年に大型SUVの「iX」から導入され始めた回生ブレーキのアダプティブモードと併せて、安全とドライバーの負担減と省エネに大いに貢献しています。デジタルで司られている技術なので、他のクルマが追い付くのはすぐのことでしょうが、現実的なレベル2の運転支援機能に於いて最前衛にあることを確かめることができました。ACCだけしかない718ボクスターのADASから短期間に長足の進化を遂げています。最新のクルマの進化はADASに最も著しく現れています。X1と718ボクスターを較べてみると、それが良くわかりました。