今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
以前にも触れたが、この数年間で際限なく膨らみ続けていたスニーカーバブルが今、急速に萎み始めているのは疑いようのない事実。その結果、ブームの中心にあったハイプなモデルの人気は沈静化。一方、コラボレーションや限定といった扇情的なワードに頼ることなく、揺るぎなき実力を備えたタイムレスなインラインモデルの需要が高まっている。今回のテーマであるナイキ スポーツウェアもまた然り。
1964年にアメリカ・オレゴン州で創業以来、ただの運動靴に過ぎなかったスニーカーを1つのカルチャーにまで高めた功績がいかに偉大かは誰もが知るところ。今年公開の映画『AIR/エア』でも文字通り“飛躍的”なストーリーを垣間見ることができる。そんな栄光の証左となっているのが、数多の名作群が収められたアーカイブの存在である。
今回はその中から、ソールに圧縮した空気を注入するという画期的クッショニングテクノロジー“エア”を搭載したモデルを中心に、スニーカー史をにぎわせてきた名作を厳選。勝利の女神“ニケ”に愛された“履ける伝説”たちの真価を、ぜひ自身の足で体感していただきたい。
1. Nike Sportswear「NIKE AIR FORCE 1 '07 LX」
上質をカタチに。揺るぎなきキング・オブ・バッシュ
スポーツの発展とともに進化してきたナイキのプロダクト。その起点にあるのが陸上競技だとすれば、今へと続く繁栄の始点となったのはバスケットボールであり、1982年に“エア”テクノロジーを搭載したバッシュの第1号として登場した「ナイキ エア フォース 1」こそが、その始祖にあたる。
オリジンは足首を守るアンクルストラップが目を引くハイカットだったが、ここで紹介するのは汎用性に優れたローカットタイプ。41年間の歴史の中でありとあらゆるカラーやアレンジを受け止め、多様なデザインが生み出してきた同モデルらしく、細やかなシボが表情豊かなタンブルレザーと上質なキャンバス素材のコンビネーション、そしてシックな色味が大人の足元によく馴染む。