ドライバーの喜びのために

 ひとつは、メカニズムが理論的に正しく、そして恐ろしく高い精度で作り込まれていることが実感できる点。乗り心地のよさも、この機械的なクォリティな高さに由来するものだ。また、クルマの動きが軽快で、いつでも自分の思ったとおりに反応してくれる点も、ドライビングの爽快さを倍加してくれる。

 ちなみに、アルトゥーラの反応のよさは、その軽量設計に最大の秘密がある。これを実現するうえで、マクラーレンの全モデルが採用するカーボンモノコックが大きく貢献しているのは間違いのないところ(ただしアルトゥーラ用のカーボンモノコックは新開発で専用品)。

 また、アルトゥーラはCO2削減を目指してプラグインハイブリッド・システムを搭載しているが、そのバッテリーやモーターのサイズを極力コンパクトにした点も、軽量化に大きく役立っているはずだ。

 そして、今回アルトゥーラに試乗して改めて感じたのが、このクルマは決して人にひけらかすためではなく、ドライバーに最大限の喜びをもたらすために作られているということだった。これはマクラーレンに限らずイギリス車全般にいえることだが、デザインもドライビングフィールもどこか控えめで、刺激的なところが薄い。けれども、人間の感性に沿ったクルマ作りにより、ドライバーに深い感動をもたらすところがイギリス車の最大の特徴であり、マクラーレンの魅力であると思う。

 いずれにしても、アルトゥーラに刹那の快感や強い刺激は期待しないほうがいい。それよりも、あとからジワジワと沸き上がるような感動を与えてくれる点にこそ、アルトゥーラの真骨頂はある。ちなみに、取材当日の私は、すべての撮影が終わって都内に戻る段になってもまだアルトゥーラに飽き足らず、そこからさらにワインディングロードを遠回りしてから帰路に着いた。こんなことをしたくなるスーパースポーツカーは、滅多にあるものではない。