卓越したドライバビリティ
こちらもアルトゥーラに限らずマクラーレンに共通した傾向だが、ドライバビリティが優れているので、意のままに操りやすいことも「同期が速い」理由のひとつである。
ドライバビリティとは、いわば運転のしやすさのこと。よりくわしく説明すると、ドライバーの操作に対して的確に反応し、ドライバーの意図通りに走らせるのが容易なことを指す。
マクラーレンはこの点が実にうまくできていて、アクセルペダルを踏み込めば、その操作からほとんど遅れることなくパワーを滑らかに生み出してくれる。
それはハンドリングについても同じこと。ステアリングを切ったら切った分だけ正確に曲がってくれるほか、ステアリング操作に対する反応が遅すぎることもなければ速すぎることなく、ドライバーの期待どおりに曲がってくれるのだ。
いっぽう、カーボンブレーキを採用したマクラーレンのなかには、ブレーキペダルを踏み始めた瞬間の反応がやや鈍いモデルが少なからずあった(その場合でもブレーキペダルをしっかり踏み込めば十分以上の減速度が得られた)が、アルトゥーラはカーボンブレーキにもかかわらず制動力の立ち上がりが自然で、とても扱い易いと感じた。
ここまで述べたように、アルトゥーラはドライバーに強い安心感を与えてくれるので、どこまでも自信を持ってステアリングを握っていられる。この辺が、素早く波長があう理由でもあるのだが、これとまったく同じ理由から、ワインディングロードを走っていても恐怖感を覚えることがない。それどころか、クルマに「まだ大丈夫!」「もっといけるよ!」と励まされているような思いを抱くことだろう。
おそらく、「ドライバーに自信を与える」キャラクターは、マクラーレンのF1マシンにも共通しているはず。なにしろF1ドライバーは200km/hを大きく越える速度域でライバルとバトルを演じるのだ。そんなとき、マシンが少しでも予想外の反応を示したら、ドライバーはそれ以上、攻められなくなるのは当然のこと。それゆえに、F1マシンはドライバーに安心感を与えることが極めて重要とされる。そして、これと同じ思想がアルトゥーラにも息づいていると推測されるのだ。
では、「スーパースポーツカーを操っている喜び」は、アルトゥーラのどんなところから感じ取れるのか?