源氏滅亡の地、修善寺
三島駅から駿豆線で30分ほど、いよいよ駿豆線の終着駅である修善寺へ。修善寺駅を訪れたらぜひ味わってほしいのが、名物駅弁の「武士(たけし)のあじ寿司」。身がぷりっとしたあじがドンとのっていて、伊豆赤城の生わさびも効いていて、本当においしいんです。駅弁の域を超えていると感じる絶品ですよ。
修善寺は桂川に沿って温泉街が広がり、川にかかる赤い橋の風景が独特の情緒を感じさせる街。弘法大師空海が仏具で川の岩を打ち、霊泉を湧き出させたという言い伝えがある「独鈷の湯」や、桂川沿いの「竹林の小径」など、歩くだけでも清々しい気持ちになれます。
竹林の小径では大きな円形ベンチにゴロンと寝転べば、すーっと上に伸びていく竹の中にぽっかり浮かぶ美しい青空を眺めることができます。京都の竹林に比べるとこじんまりしていますが、風情があって私はとても好きな場所です。
温泉街の中心には、地名の由来にもなっている「修禅寺」があります。弘法大師が開基したといわれる古刹ですが、頼朝の嫡男であり鎌倉幕府二代将軍となった源頼家が幽閉され、非業の死を遂げた源氏滅亡の地としても知られています。
修善寺周辺には、ほかにも源氏一族が血で血を洗った悲劇の記憶が刻まれています。修禅寺に対面した鹿山の麓にある「指月殿」は、暗殺された頼家の冥福を祈って母である政子が建立した経堂です。伊豆最古の木造建築物といわれ、数千巻もの経文を寄進して頼家の菩提を弔ったといわれています。指月殿の隣には、頼家の墓所も。一族のためにそうせざるを得なかったとはいえ、お腹を痛めて産んだ我が子の死…。政子にとってどんなに辛く悲しいものだったでしょう。母としての政子の心情を思わずにいられません。
また、修禅寺の左隣にある「日枝神社」の境内には、かつて源範頼が自刃した(諸説あり)とされる「信功院」がありました。現在はその跡を伝える庚申塔が建てられています。範頼は頼朝の異母弟ですが、頼朝に謀反の疑いをかけられてこの地に幽閉されていました。
三島から始まり、修善寺で終わる駿豆線。奇しくも源氏再興の地と終わりの地を路線でつないでいますね。修善寺周辺だけでも見どころが多いので、「旅助け」を使って1日目は駿豆線沿線の史跡を巡り、1泊して2日目に修善寺をじっくり散策するという旅も良いかもしれません。修善寺には、夏目漱石が静養していたことで知られる「湯回廊 菊屋」など、歴史を感じる温泉宿もあっておすすめですよ。
私が駿豆線を訪れたときの様子は、「てくてくツアーガイドさん( https://www.tek2.jp/) 」の動画でも見られますので、ぜひこちらもご覧になってくださいね。