そもそもワインはどこで何を買えばいいんだ?

「私は、アセットマネージメントと呼ばれる、不動産を証券化するビジネスを早い段階ではじめました。その後リーマンショックが来て、不況に合わせたビジネス、企業・事業への投資もはじめ、そこで飲食にも関わるようになり、ビジネスでも、ワインと付き合うようになりました。そのころはリーマンショック後で1ドル70円台の円高。ワインにいま投資しておけば、たとえ円が半値になって、ワインが高くなっても、手が出せないというようなことにはならない、と考えたんです」

 思い立ったら即実行。

「そこで、社内にワインを買うプロジェクトをつくりました。ところが、ここで、ワインは買えばそれでいい、というものでもないことに気づきます。そもそも、どこから買うか、何を買うか、の判断材料が曖昧なんです。少量多品種ですし、売り手は自分の売りたいワインを売ろうと頑張る。それでひとつのワインに詳しくなっても、それは全体からしたら何百万分の1、何億分の1で、俯瞰的な視点からは程遠いです。このハードルをなんとか越えて買っていっても、数が増えてくると保管や輸送にかかるコストがバカになりません」

 と、ここで、このwine@ビジネスを統括する橋本拓也さんが口を開く。この人物はwine@に関わるようになってワインを飲みはじめたという、まだ20代後半の若者で、ロジスティクスやITなどに精通する。ワインギョーカイではあまり見かけないタイプだ。

「一般的にはサプライチェーンというのは最適化されるものです」

 と、いきなりワインギョーカイでは耳慣れないことをおっしゃる。

取締役として事業企画、マーケティングを統括する 橋本 拓也氏。現在はJSA認定 ワインエキスパートの資格を持っている。思い出のワインは『シャトー・ベラ』のリースリング

「ところがワインの業界は、インポーターさんだけみても、イタリアの特定の生産者さんのワインだけを扱っている、というような、とても小規模な会社が数え切れないほどたくさんあります。他の業種であれば、こういったところは、やがてくっついていって大きな組織になり、業界全体の最適化・合理化が起こっていくんです。それは、消費者にとってはよいものがより安く手に入る、知らなかった商品に出会いやすくなる、といったメリットになります」

 そう、これがワインでは難しい。日本のどこかに、私を待っている人がいるように、名品が人知れず眠っている(後編へ続く)